アリスと暴君兎
□はりついた笑顔
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男A「こいつ、他校のスパイじゃねぇの?」
本当、
何を言っているんだこのバカは。と、冷静に思った。
近付いてきた三人組は、黒なのか金髪なのかよくわからない髪色をしていたり、刈り上げた頭にラインが入っていたり、唇に輪っかがついていたりと、リアルクローズであった。
あわあわしているうちに、キッチリと取囲まれ、上から下からまた上まで視線を向けられる。
丁度、その視線に不快感を覚えたとき、投げかけられたのが冒頭のセリフである。
──なぜ夜兎高にスパイが現れるんだ。国家機密でもあんのかここには、バカヤロウ。
男B「お前、スパイじゃねぇなら証拠見せてもらうぜ」
どうやら、バカは一人だけじゃなかったらしい。
男B「身体検査、だな」
男C「いいねぇ。」
リアルクローズもとい不良たちは、ニヤニヤしながら"身体検査"という聞きなれない言葉を発したかと思うと、
私の肩を掴み抱き寄せながら歩きだした。
『ちょ…っ!』
なんだこの男、やたら距離が近いな。
肩と男の胸が当たるほどの距離。急に距離を詰められたせいか益々不快感が増した上、嫌な予感もした。
男A「保健室行くか」
男B「たしかあそこ、センコーもいねぇし誰もこねぇよな」
──身体検査、保健室、誰もこない
私は理解し、嫌な予感は見事的中した。
───これは、さすがに、ヤバイ。
『い、いきませんん!!』
校内に入るのをあんなに悩んでいたのに、気が付けば玄関だった。
そして、不良たちはハッキリと発せられた私の拒否をナチュラルに無視。…大人しく歩みを止めてくれるとも思ってもいなかったが。
歩くまいと足に力をいれ踏ん張るものの、横からも後ろからも引っ張り、押されるので、もつれながらも足は保健室であろう場所へと進んでしまう。
…三対一じゃなんも抵抗できねェエエ!!
このままじゃ、大人の身体検査されてしまううう!!!
『や…やだっ…!』
「ねぇねぇ。俺も混ぜてよ」
必死で抵抗していた最中、私と不良三人の目の前に
一人の男が現れた。
はりついた笑顔
『(…笑顔……嘘くさっ!)』