アリスと暴君兎
□近付く、暴君の足音
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──とある教室
「俺、眠ってくるよ」
「お、おい!?団長!」
教室を出ようとする三つ編みの男を、周りより少し老けた顔のガタイのいい男が、その足を止めようと声をかける。
「アンタ、進級早々…」
「んー?邪魔するの?
殺しちゃうぞ?」
すると、三つ編みの男は、
女受けのいい顔を男に向けて、ニコッと笑顔をつくった。
笑顔に含まれた強い殺気と重圧が、この場にいる全員を襲う。
言葉をつまらせ、
諦めたように息を吐く男をみて満足したのか、三つ編みの男は教室から出て行ったのだった。
「…いつみてもおっかねぇな、神威さんのアレ(笑顔)」
「……三羽烏の阿伏兎ですら、かたまっちまうんだ。
俺らがなんとかできるレベルじゃねェよ」
「あの人に勝てる奴なんて、あと数十年、、いや現れねーかもしんねぇな」
────−−
「ふぁあ〜…っ」
男は、大きく欠伸をしながら目的である保健室へと向かう。
――本当、
この学校は退屈だ。毎日同じことの繰り返し。
俺より強いやつもいなければ、同等のやつもいない。
みんなザコばっか
阿伏兎たちはそれなりに楽しんでいるんだろうけど、平和な学校生活、友情云々じゃ、
俺の渇きを潤すことはできない。
――もっと、血が、体が疼くような刺激が…
もともと戦闘を好む性分
自分を恐れ、喧嘩をふっかけてくる輩が存在しない今
緊張感のない日々は実に退屈で、最高につまらない
生きていることさえも、億劫に感じていた。
このまま死んで、地獄とやらで閻魔大王と戦ってみるのも悪くない。
そんなことを考え始めた三つ編み男の目に、目的地がみえてきた。
あり。
保健室に先客がいる。しかも三人?
ベッド二つしかないのになァ
…オハナシだけじゃ、譲ってくれないよねぇ?
男の唇が不気味に弧を描く。
三対一
人数のぶんだけ、俺を楽しませてくれるかなぁ
これから起こるであろう出来事に、期待と興奮でゾクゾクと首筋になにかが奔った。
そして男は、その男たちを視界にいれながら、捕食者のように目を光らせゆっくり近付く。
「──あれは。」
すると、
三つ編み男は、三人の男に取り囲まれている「何か」に気が付いた。
──…へぇ、楽しそうなことしてるなぁ
三つ編みの男の興味が、
三人の男から、男たちが取り囲む「人物」へと移り変わった。
カツン、と
男の足音が不気味に響いた。
近付く、暴君の足音
阿「あの我儘団長め。
留年しちまえばいいんだ」