アリスと暴君兎
□悪魔なヒーロー
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うわぉ。なんたる美青年。
地毛であろうピンクの髪の毛は後ろでゆるく三つ編みにまとめられ、前の高校にはいなかった恐ろしく整った顔立ち。ありがちな表現で申し訳ないが、芸能人顔負け、である。
…これはあれですか。よくみる漫画的展開ですか。
喧嘩が強い美青年が現れ、不良から私を守り、そして恋に落ちる、あの誰しも夢をみる例のアレですよね。
…とおもいきやだよ。
ヒーローじゃないの?
てかヒョウ柄長ラン?どこで売ってんの?
救世主じゃないの?
俺も混ぜてよ?
おまえも加害者側かい!!!!
男A「な、んで神威さんが…っ!」
男B「この時間は保健室にはいないはずじゃ…」
「なんで?俺がココにいちゃだめなの?」
男C「いえっ!そんなことないです!」
「まぁ、どうでもいいけど。
とりあえず、
ソレ置いてどっか消えてよ」
「「「はいっ!」」」
不良三人組は、言われた通り物凄いスピードで逃げていってしまった。
…ひとまず、助かったとしよう。
しかし、
問題はまだひとつ残されている。
………表情の変わらない男が超私をみていらっしゃる。すげー恐怖。なにこれ。
あの不良たち、この人に敬語つかってた
てことは、ラスボス?え、嘘。
はやすぎるわ!ラスボスゥウ!!!主人公(私)、まだレベルも経験値もねーよ。ゲーム成立しねーよ。
そんなことを脳内で繰り広げながらも、じりじりと近づくそいつから遠ざかるように、
条件反射で後退した。
…なんだよ、あの笑顔。
張り付いてるよ。むしろ、お面にすらみえるわ。
てかこの人何者なんですか。
笑顔から妙な圧力感じて、あの人の横を走り逃げ切る自信ないわ!
無理ムリ!ムっ…
どんと、お約束の壁に背中がぶつかる。おもわず「うっ」って声が出た。
つまり、退路が断たれたことを意味していた。
…あ。
これは、かなりヤバくね?
正直、あの三人組のほうがまだ逃げられた。
ちょっとこの人は厳しいです。
そう考えていると、フっと顔に影がかかる。
視線をむければ、
三つ編み男が私の脇腹のすぐ横の壁と、顔の横に手をついて、にっこり笑って立っていた。
悪魔なヒーロー
えぇ、はい。
いわゆる壁ドンてやつです。