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□厄日なアルバイト
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最後の配達を終え、お店へと帰宅。

丁度時間も終業五分前で、同じ時間に終わる子たちも片付けをはじめていた。

この様子だと、私の配達も終わりだろう。深夜の人に交換の時間帯だし。


『上原、戻りでーす』

と、声をかければおかえりなさーいやら、はーい!などの声が飛び交う。

そんななか、一人だけ思いっきり私の方に顔を向けた。物凄い形相で。


「蒼ちゃぁああん!!!!一生のお願い!頼まれて!!!」

『ぐえっ』


店長だ。

突撃され、踏ん張ったおかげで倒れることは免れたものの、衝撃で息が一瞬止まる。いくら身長が小さくて軽いからといっても突撃は勘弁してほしいものだ。

最高齢のスタッフに同じことをしてぎっくり腰にさせたことは記憶に新しい。

そんな店長の手にあるものに、私は凄く嫌な予感がした。


「ほんっとギリギリの時間なんだけど!最後に!これ配達してほしいの!!!」


ビンゴ!!!!


『・・なぜ私に?』

別に配達が嫌なわけではない。

あ、やっぱちょっと嫌。早く帰ってご飯が食べたいんです・・・まぁその話は置いといて。

普段、時間オーバーの仕事を店長は絶対にさせない。だから、その仕事を深夜組ではなく、終業ギリギリの私に頼むのか、少し気になった。


「実はねぇ、深夜のデリバリーの子たち少し遅れちゃうらしくて…蒼ちゃんと同じ時間帯のデリバリーの子は入ったばっかりの子達で少し不安っていうか……」

『不安、ですか』

確かに私以外のデリバリーはほとんど入ったばかりの子だけど、バイクの運転に問題はないし、きちんと配達しているはずだ。

つまりは。

店長のこの言葉は本心ではない。本音は裏にある。

怪しむような視線を向ければ、観念したように店長が苦笑いをしてみせた。


「…ちょっと怖い感じの声だったからね?時間に厳しそうだし、バイクでコケて作り直し!ってことになったらあとが怖そうな感じだったの!!みんなの運転を疑ってるわけじゃないのよ?

それに、最終的に怒られるの私だし!」

でたな本音。

まぁ、経験がある私のほうが、配達が完璧に行える確率が高くなるからという考えなのだ。・・・怒られたくない気持ちが存分に含まれた考えなのだろうけど。

店長にはお世話になっているし、店長のためなら配達ぐらい、と思う。


しかし、だ。

私だってできれば怖い人相手にしたくない。怖いもんは怖い。店長は好きだけど、私の無事にはかえられない。


『・・・ジャンケンにしましょう』

「蒼ちゃん、ジャンケン超強いじゃない!だめ!」

『ジャンケンは平等ですよ、平等』


さぁ、ジャンケンしてさっさと帰宅しよう。

私を引き止める店長をスルーし、デリバリー組を集めてジャンケンを開始しようとした。


「お願い!終業時間のオーバーぶんちゃんと給料いれるし、帰ってきたら私のオリジナルピザ食べさせてあげるから!!!」

『怖いやつがナンボのもんじゃーい!!!行ってきまぁす!』

店長からピザを受け取り、バイクに乗り込む。この間5秒

私は意見は見事に変わり、店長オリジナルピザの誘惑負けた。


「やっぱ楽勝だわ、蒼ちゃん扱うの」なんて店長の声は、脳内ピザの私には聞こえませんでしたとさ。めでたしめでたし。

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