Dark Area

□地獄の釜が開く悪戯の日に
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ある朝、ベルフェモンが目を覚ますと、
珍しい事にベルゼブモンが
台所で何か作業をしていた。
「にゃぅ?」
ベルゼブモンを呼ぶように鳴いた
ベルフェモンの声に気付くと、
ベルゼブモンは作業の手を止めて
ベルフェモンのもとへやって来た。
「起きたか、フェゴール。」
「うん。……何、してたの?」
「あぁ、今日は
 ハロウィンだからな。
 ちょっと菓子を作ってたんだ。」
「ふぅん……?」
「すぐ終わるから、
 ちょっと待っとけよ?」
その言葉にベルフェモンが頷くと、
ベルゼブモンはニッと笑って
ベルフェモンの頭を撫で、
台所に戻って行った。
その後ろ姿を見送りながら、
ベルフェモンは再び
ベッドの上で丸くなった。

暫くすると、ベルゼブモンは
作っていたそれを
冷蔵庫に入れて戻って来た。
それに気付くと、ベルフェモンは
頭を上げて首を傾げた。
「後は、固まるまで待機な。」
「……チョコ?」
「うんにゃ、ゼリー。
 ……チョコの方が良かったか?」
「ううん。ゼリーのが、好き。」
ベルフェモンの答えに、
ベルゼブモンは至極楽しそうに笑った。
「そりゃあ良かった。」
言って、ベルゼブモンは
ベルフェモンを抱き上げ
ベッドに腰を下ろした。
そんなベルゼブモンに、
ベルフェモンは珍しく自ら擦り付いた。
「フェゴール?」
「……トリック。」
楽しそうに尻尾を揺らすベルフェモンに、
ベルゼブモンは一瞬何かと首を傾げたが、
すぐに理解して苦笑した。
「フェゴール、
 それちょっと違ぇよ。
 "Trick or Treat"だ。」
「……トリック、ァ、トリィト。」
「あ〜……。
 まだちっと違う気もするけど、
 まぁ良いか。
 もう少し待ってような?
 ゼリーはしっかり
 固まんねぇと、美味くねぇしよ。」
「………分かった。」
言い聞かせるように言うと、
ベルフェモンは揺らしていた尻尾を
だらんと垂らした。
元気がなくなったような状態に、
ベルゼブモンは首を傾げた。
「フェゴール?
 もしかして、腹減ったか?」
「ん、別に。」
「そうか?
 ジャーキーで良けりゃあるけど。」
「………ん〜ん、いらない。」
言ってまた眠ろうと身体を丸める
ベルフェモンを持ち上げ、
ベルゼブモンは台所の方へ向かった。
その持ち上げ方に、ベルフェモンは
ふぎゅうと鳴いて抗議したが、
聞き入れられはしなかった。


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