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□季節移ろうその前日に
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2月3日、
立春を明日に控えた節分の日。
四聖獣の面々は、
各々が守護する地域の神社に
魔除けの豆を配り終えると
今年も中央神殿に立ち寄り
揃って恵方巻きを食べた。
「ごっそーさんでした!」
最後の一口を飲み込んだ
バイフーモンがそう言って
頭を下げると、シェンウーモンは
微笑ましげに目を細めた。
「……ご馳走様。」
「お粗末様でした。」
バイフーモンに続いてそう呟いた
スーツェーモンに、チンロンモンは
笑顔で返した。
「……さて、それでは
 そろそろ全員
 食べ終わったようじゃし、
 今年の節分は
 これでお開きにするかの。」
「そうだな。
 それじゃあ……。」
「なれば、
 我はこれで
 失礼させて貰おう。」
言うなり、スーツェーモンは
スッと立ち上がって飛び立った。
「ちょっと待てスーツェーモン!」
飛び立って行った
スーツェーモンを追い、
チンロンモンも中央神殿を後にした。
その二人を見送りながら、
バイフーモンは溜息を吐いた。
「……ホント。
 相変わらずだよな、彼奴ら……。」
「そうじゃのぉ。
 ……さて、儂らも
 そろそろ帰るとするかの。」
「お、おぅ!」
帰り支度を始めたシェンウーモンに
続くように立ち上がった
バイフーモンは、しかし
片付けを手伝うでもなく
立ち尽くしてしまった。
「バイフーモン?
 どうかしたかの?」
「いや、その……。
 この後、って……。」
「フム……?
 儂は、真っ直ぐ帰るぞ?
 明日は立春。
 管轄が儂の冬から
 チンロンモンの春へと
 移り変わる日であるからの。
 引き継ぎの準備が色々あるでの。」
「そう、だよな……。」
何だか残念そうに俯く
バイフーモンの後頭部へ
すりと擦り付くように
シェンウーモンは
蛇の方の頭を寄せた。
「どうした?
 バイフーモン。
 先から何やら
 元気が無いように見えるが……。」
何かあったかと問われ、
バイフーモンは言葉に迷った。
立冬に季節の引き継ぎをしてから
この日まで、シェンウーモンの
忙しさを理由に、なかなか
逢えない日が続いていたのだ。
久々に逢えたのだから、
もっと一緒に居たいと言うのが
本心なのだが、
それを言ってしまうのは
我儘であろうかと悩んだのだ。
暫く黙って答えを待ったが、
一向に話す気配の無い
バイフーモンに、シェンウーモンは
溜息を吐いた。
「……言いたく
 無いのであらば、
 それでも良い。
 じゃが、決して
 独りで抱え込むで無いぞ?
 必ず儂が
 力になってやる故、
 困った時には呼べば良い。」
「おぅ……。」
優しくも頼もしい言葉に
バイフーモンは素直に頷き、
赤くなった顔を隠すかのように、
シェンウーモンの二つの首の間に
頭を滑り込ませた。
それにシェンウーモンは何も言わず
そっと包み込むように、二つの頭で
バイフーモンに擦り付いた。
それにバイフーモンも
嬉しそうに尻尾をくねらせ、
甘えるように擦り付いた。
「……なぁ、
 シェンウーモン。
 明後日は、暇か?」
「そうじゃの……。
 季節の引き継ぎが済めば、
 大きな仕事は無くなるし、
 明後日からは暇になるのぉ。」
シェンウーモンの答えに、
バイフーモンはそれなら
と大きく尻尾を振った。
「そ、それじゃあさ!
 明後日……!
 明後日、
 泊まりに行っても良いか!?」
何故だか異様に意気込んで
そう聞いて来たバイフーモンに、
シェンウーモンは
一瞬キョトンとしたが、
すぐ何と可愛い望みであろうかと
目を細めた。
「無論じゃ。
 泊まりにでも
 遊びにでも、
 気軽に来れば良い。
 いつでも、
 儂は待って居るからの。」
そう言って頭を撫でてくれた
シェンウーモンに、
バイフーモンは
満面の笑顔で元気良く頷いた。


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