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□漸く訪れた啓蟄の日
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三月五日、啓蟄の日。
大地が温まり冬眠をしていた虫が
穴から出てくる頃の事だというが、
古くはヘビも"虫"であり、
そもそも"虫"という漢字は
"コブラ"の姿から成り立ったという。
それ故"啓蟄"とは、
冬眠せし生物たちが
起き出す季節とされていた。
「――だってのに、
 今日休みじゃねぇのな。」
「そんなの、しょうがないだろ?
 スーツェーモン様だって、
 管轄初めの年でお忙しいんだ。
 それを臣下たる
 オレらが手伝わないでどうすんだよ?」
「そらそーだけどよ……。」
本日の任務は、スーツェーモン様の
書類処理をお手伝いする事であった為、
インダラモンとサンティラモンは
南の神殿内にある執務室へ
向かいながら話していた。
しかし、半ば拗ねているような
インダラモンの態度に、
サンティラモンは正直
どうしたら良いのかと困っていた。
「……せっかくの
 啓蟄だしよ、サボっちまおうか。」
言って突然抱き寄せられ、
サンティラモンは更に困惑した。
するとその直後、
ガスッという鈍い音と共に
インダラモンが体勢を崩した。
「インダラモン!!?」
「道のど真ん中で止まるな、邪魔だ。」
至極聞き慣れた声に、
インダラモンは歯噛みして
体勢を直しながら振り返り、
背負っていた宝貝<パオペイ>を構えた。
「まぁたテメェかパジラモン!!!」
「喧しい。
 行くぞサンティラモン。
 スーツェーモン様がお待ちだ。」
「え、あ……。」
「ふざっけんな!!
 テメェ他者<ひと>
 殴っといて無視か? ああ゛!!?」
激昂するインダラモンに、
サンティラモンはどうしようと
オロオロしていたが、パジラモンは
興味も無さげにただ溜息を吐いた。
「廊下の真ん中で
 サンティラモンを
 唆していたそなたが悪かろう?」
「うっせぇ!!
 だからっていきなり
 殴って良い
 理由にゃなんねぇだろうが!!!」
「それは悪かったな。
 そなたが口で言っただけで
 動く程賢かったとは知らなんだ。」
「ッテメェ今俺の事バカっつったろ!!!」
「ほぉ、そなたにも
 それが理解出来る
 程度の知能はあったか。」
「はあぁぁぁあ゛!!!?」
あくまでも淡々と毒を吐くパジラモンに、
インダラモンは声を荒げ、
掴みかからんと詰め寄った。
その瞬間、奥の執務室の扉が開け放たれ、
スーツェーモンが姿を現した。


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