Kernel.2

□偶にはゆっくりお休みよ
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南の神殿の執務室にて
書類整理をしていたスーツェーモンは、
不意に顔を顰めて作業の手を止めた。
参照すべきデータが、一つ足りなかった。
スーツェーモンが今整理していたのは、
先日チンロンモンから引き継いだ
季節のデータであったのだが、
作物の種植え状況に関しての参照データが
欠けていたのだった。
自分がうっかり受け取り損ねたのか、
はたまたチンロンモンが
渡し損ねたのかは図りかねるが、
あのデータが無いと作業は進まない。
事情を説明して
もう一度貰うしか無いかと溜息を吐き、
スーツェーモンは立ち上がって、奥にある
自身が出入り出来る程大きな窓を開けた。
すると、飛び立とうとしたその先に、
今正に逢いに行こうと思っていた
チンロンモンが居り、
スーツェーモンは顔を顰めた。
「……何故貴様が此処に居る。」
「スーツェーモンが
 困っているような気がしてな。」
爽やかな笑顔で答えるチンロンモンに、
スーツェーモンはチッと舌打ちした。
「……貴様。
 まさかわざとじゃあるまいな?」
「何がかな?」
「ッ、無いんだよ!
 種植え状況に関するデータがな!!」
不毛不作になっても知らんぞと
喚き散らすスーツェーモンの剣幕にも
怯む事無く、チンロンモンは
ただにこにこしていた。
「ああ。そうじゃないかと
 思って、此を持って来たのだ。」
そう言って一つのデータチップを
取り出したチンロンモンに、
スーツェーモンはピキッと青筋を立てた。
「やはりわざとか貴様!!!」
がなり立てるスーツェーモンの隙をつき、
チンロンモンがその額に
軽くキスをしてやると、その途端
スーツェーモンは大人しくなった。
「そう怒るなスーツェーモン。
 少しぐらい夏の到来が遅れても、
 下界の者達はそう困ったり等せぬ。」
「っ……そんなもの、関係無い!」
「そうか?
 近年、汝が頑張り過ぎる所為で、
 梅雨明けが早いように思うのだがな?」
「我の所為か!!?
 確と雨を降らせぬ
 貴様にも落ち度はあろうが!!!」
「それは……また少し難しい問題でな。」
言って苦笑するチンロンモンに、
スーツェーモンはフンと
高圧的に溜息を吐いた。


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