Kernel.2

□偶にはゆっくりお休みよ
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「……ともかく、
 そのデータを置いてとっとと帰れ。
 貴様もこんな所で油を
 売って居られる程暇では無かろう。」
「……お茶ぐらい、
 淹れてはくれないのか?」
「勝手に押し掛けて
 来て置いて何様のつもりだ。」
言って顔を顰めるスーツェーモンに、
チンロンモンは苦笑した。
「そうか、仕方無いな。」
そう言うとチンロンモンは
スーツェーモンに
データチップを手渡した。
思いの他あっさりと
データを渡してくれたチンロンモンに、
スーツェーモンは訝しげな顔をした。
しかしチンロンモンは
優しく微笑むだけだった。
「あまり、根を詰め過ぎるなよ?」
そう言って踵を返した
チンロンモンを引き留めんが為、
スーツェーモンはその尻尾に
嘴で噛み付いた。
「スーツェーモン?」
「……何なんだ、貴様は。
 あっさり帰ろうと等、するな。」
「汝が、帰れと言うたのだろう?」
「ッそれでも!
 それでも少しは
 食い下がるとか、
 何か無いのか!?
 貴様は、我の事が
 好きなのでは無かったのか!!?」
瞳を潤ませながら叫ぶスーツェーモンに、
チンロンモンは優しく笑いながら
傍へ寄った。
「好きだからこその譲歩だ。
 無理に持て成してくれる必要は無い。」
「ッ――!!!
 無用な遠慮など要らぬ!!!
 茶ぐらい馳走されて行け!!!」
今用意すると言って執務室を出て行った
スーツェーモンに、
チンロンモンはクスクスと笑った。
至極可愛うて堪らぬと。
そう思いながら、
チンロンモンは執務室を見渡した。
机の上にはデータチップやら
メモリーディスクやら書類やらが
乱雑に積み上げられて居り、
その脇のソファーには
軽い焦げ跡がついていた。
その様子にチンロンモンは
苦笑しながら溜息を吐き、
取り敢えず乱雑に積み上げられた物たちを
綺麗に種別毎に並べ直していった。
その途中、処理済みのデータが
未処理の物の中に
混ざっている事に気が付くと、
それらは纏めて別の場所に置く事にした。


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