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□No one else but you
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「ジョーカー君のバカッ!! もー知らないっ!!」
大怪盗という名を欲しいままにしている人物の発言とは到底思えないセリフを残してクイーンが怒ったように部屋を出ていく。
何も言わずにそれを見送ったジョーカーの手の中で、<南国ビーチで優雅なバカンス〜7泊9日の旅特集〜>と仰々しく書かれたパンフレットがグシャリと音を立てる。
ジョーカーは自分の手を見下ろして、不必要に入れすぎた力をゆっくり抜いて、目を閉じる。

「人の気も知らないで…」
ぽつり、一人呟やいてみても分かって貰えない寂しさが埋る訳ではない。
――――僕が気に掛けてるのは貴方だけなのに、どうしてそんな単純な事を分かってくれないんです?

[……ジョーカー]
「なんだい、RD」
[あの人がああなのは貴方のせいじゃないと思います]
気の利く人工知能は傷心の彼に温かいジンジャーティーを淹れてくれる。
「…ありがとう、RD」
[……いえ]
薫りの豊かなジンジャーティーがささくれかけた心に染み渡る。
そのじんわりとした温もりが思い起こさせるのは彼へのどうしようもない想い

好きとか愛しているとかそんな軽い言葉では表現出来ない、道化師の思い

黒くて重い、到底女王には見せられない、思い…
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