gift

□サンタクロース
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月が真上に登った深夜…。
ある家の窓にゆっくりと忍び寄る小さな影があった――…。


何度も手に持っている紙で合っているか確認する。

「コソ〜リ…コッソ〜リ…」

足音を立てないようにゆっくりと忍び足で窓に近づく千鶴。

「す、すみません…お邪魔、します…」

そして申し訳なさそうに消え入りそうな声で窓に手をかけ、そーっと開ける。

まるで泥棒みたいなやり方だが、普通なら謝ったりせずに勝手に侵入するだろう。

しかも赤や白と云った目立つ色の上下の衣装でミニスカートからは細く色の白い素足がチラチラと見え、頭には可愛い帽子を被っている。
これでは自分から見つけてください、と言っている。

そして手には綺麗にラッピングされた箱を持っていた――。


今日は【X'mas】――…。


良い子にしている所にサンタさんが欲しいものをプレゼントしてくれる大変素晴らしいイベント――。


今コソコソとしている、この小さな可愛い影こそが、そのサンタさんなのだ。

「勝手にお家にお邪魔するのは…ドロボウさんみたいで気が引けるけど…近藤先生に頼まれたことだもん、やらなくっちゃねっ!」

小さくガッツポーズをして自身に言い聞かせ、開けた窓から辺りを見渡してゆっくり部屋に入る。

部屋は何もなく殺風景。
住人はどうやら現在不在らしく千鶴サンタはホッと胸を撫で下ろす。

本来なら寝ている子の枕元にプレゼントを置く筈なのだがどうやら緊張のあまりか相手がいないことに何も疑問に思わなかった。

「良かった…。見つかったら勘違いされちゃうから早くプレゼントを置いて出ていこう」

枕元にプレゼントを置き、その場を去ろうと窓に向かう。

「――何に勘違いされちゃうのかな?」

「決まってます!ドロボウ…さ…ん…に…………っ!?」

誰もいない筈の部屋から声が。
しかも聞き覚えのある声…。
その声に思わず答えてしまって、全身から一気に汗が噴き上げ、身体は固まってしまった。

「へぇ〜、ドロボウさん、ねぇ…確かに不法侵入は犯罪だよね」

「……おっ…おきた、せんぱい…」

「何かな?可愛いサンタクロースさん?」

ゆっくりと声の主の方を振り向くと、そこには月の光に照らされ、ニッコリと微笑んでいる沖田が立っていた。

「なっ、なんで…」

「それはこっちの台詞だよね?ここは僕の家だけど」

「え?…ええーーーっ!!う、うそっ?!近藤さんはそんなこと……」

「近藤さん?」

ハッと口元を押さえ目を泳がせる。

「なっ、なんでもないです!」

これは千鶴と近藤の二人だけのヒミツ。
突如、近藤に頭を下げられイイコにプレゼントを運んで欲しい、と地図とプレゼントと、そしてサンタの衣装を渡され頼まれてしまった。
そんな風に頭を下げられては断わることなど出来る訳もなく了承してしまった。


「…そっか、近藤さんはやっぱり優しいなぁ」

「?」

沖田は意味ありげに笑みを浮かべ、よく意味が分からず小首を傾げている千鶴にゆっくりと近付く。

「おっ、沖田せんぱ…い…!?」

「何?」

「ち、近いです…」

いつの間にか目の前に立たれ千鶴は逃げ場を失ってしまい、あわあわと焦り頬がみるみる朱色に染まる。

「だってプレゼント、でしょ」

【千鶴】をすっと指差す。
千鶴の表情は、えっと驚きに変わりプルプルと頭を横に振り否定する。

「ち、違いますっ?!私はサンタでプレゼントは彼方に――…」

先程近くのベットに置いたプレゼントを指差す。
沖田はそちらをチラッと見て、すぐまた千鶴に向き直り笑みを向ける。

「やっぱり、こっちがプレゼントだよ。――それにこんな時間に男の部屋にそんな可愛い格好して訪ねてくるなんて…」

「せ、先輩…?!」

更に距離は縮まり、千鶴の鼓動は自分でも分かるほどバクバクと鳴り響く。

「千鶴ちゃんが悪いんだよ……」

甘く耳元で囁いてきた沖田に恥ずかしくなり、ばっと顔を上げると互いの目と目が合う。

その時――…月の光が沖田の整った顔を照らす。
その顔はいつも見せる少し意地悪な顔ではなく、優しく、そして女の自分よりも美しく、妖艶な顔――…。
まるで自分を誘っているみたいに見える。
そんな表情をされ千鶴の胸はトクンと跳ね、またも頬が熱くなる。
そんな事を思うのも“惚れた弱み”なのだろうと心の中で思う。

「…そんな誘った顔して…これでもまだ自分が【プレゼント】だって思わないの?」

「…?さそっ…ひゃあ〜っ!!」

ミニスカートから出ている白い足を撫でられ、千鶴は間の抜けた声を上げてしまった。

「おおお、沖田せんぱいっ!?だっ、ダメですっ!?」

真っ赤な顔をして必死にスカートを押さえるが敵う筈がなく…

「今年はサンタさん(近藤さん)に感謝だなぁ〜」

「…やっ、だ…だめで…す…おきたせん…ぱ…」

頬を染め、潤んだ瞳で見つめてくる千鶴にたまらなくなり、さっきよりも優しくそっと耳元に囁く……


「……千鶴ちゃん、好きだよ……大好き…」


「…っ!?……わ、わたしも…で…す」


「……良かった…Merry Christmas――…」



そして部屋には月の光によって二つの影が一つに重なったのだった――…





end





皆様Merry Christmasです☆
こんなSSですが
私からのささやかなX'masプレゼントと云うことでフリー配布させて頂きます。
よろしければお持ち帰り下さいませ〜☆


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