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□X'masパーティー 前編
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――その頃、既に体育館に集まっている教師たちは……。
「やべぇ…腹減った…もう限界だ!!」
永倉は目の前の美味しそうな料理をヨダレが出そうなぐらい見つめて手を伸ばそうとしていた。
そこへ今まで見守っていた原田が永倉の伸ばした手をペシッと叩き落とした。
「おい新八、もう少し待てよ!」
「いてー、左之っ!お前なぁ、こーんな美味そうな飯が目の前に並んでんだぜっ!?」
「千鶴がまだ来てねえんだからそれまで我慢しやがれっ!」
ったく、と隣で今にも料理にがっつきそうな永倉を原田が咎めた。そしてずっと疑問に思っていた事を訊ねる。
「なぁ、新八…。ちと疑問なんだが、よくこんな豪華なパーティーをうちの学園で出来たな…」
「おう!近藤さんもマジで太っ腹だよなっ!いや〜、ありがてー」
原田とは正反対で永倉は何も疑問に思うこと無く嬉しそうな笑みを浮かべ瞳をキラキラと輝かせて近藤に感謝する。
駄目だこりゃ、と永倉に呆れてため息をついた。
そして何か怪しいと訝しげに形の整った眉を歪めた。
…………
――その頃生徒たちは……。
沖田、斎藤、平助の二年生組が集まっていた。
しかし平助の表情は複雑で何か言いたげであった――。
「…総司、一くん。変なの…」
「どうしたの平助くん、仏頂面なんかして。僕は平助くんのその格好のが面白いと思うけど♪」
「な、なんでだよっ!?」
「総司、平助。あまり煩くするな。周りの者に迷惑がかかる」
「相変わらずこんな時まで堅いね、一くんは。平助にこんなこと言われて気にならないの?」
確かに自分が【変】などと言われる事はしていないと疑問に思う。
「……平助、何故変なんだ?」
「えっ……な、何て言うかさ……。いきなり正装とか言われて…なんか2人して…ホスト、みてーなんだもん」
平助自身いつも思っていた事がある。
自分でも分かっていたが沖田と斎藤は普段から落ち着いていて平助と同い年に見えないと周りによく言われる事がある。
しかも今日は正装をしている為か何故か同級生の2人からは色気まで感じてしまう。それが悔しい。
「クスッ。だったら平助はまるで七五三みたいだね」
「なっ!?七五三って…お前いくらなんでもそりゃひでーよ!?」
「えー、僕らがホストなら平助はお祝いされに来ました、って感じにしか見えないし。ね、一くん」
「…俺はあんなことはやらん!!」
「ちょっ、えっ、いや…別にしろって意味じゃなくって!!」
斎藤にキッと睨まれ、平助は焦ってブンブンと手を振った。
「だったら僕らよりあっちにいる左之さんのがそっちぽくない?」
「あー…、確かに」
少し離れた所に永倉と一緒にいる原田をチラッと見て見ると、いつも着ているスーツとは違って原田の紅い髪と良く似た感じの色のスーツを着ていて、何故かいつもより更に大人の色気を感じる。
前々から他校の女子や母親たちに人気のある原田は教師に見えなかった。
更に今のあの格好では見える理由がない。
きっと今の格好で街を歩いていたら絶対にそっちだと勘違いされ声を掛けられているだろう。
「あんな格好が似合う教師って、良いのかよ…」
「それに比べて隣の新八さんは…ぷっ…」
原田を羨ましがる平助に、永倉を見て笑う沖田。
「今にも目の前の料理に飛び掛かりそうだな」
その有り様を見て呆れる斎藤。
「……それにしても土方先生と雪村はどこまで行ったのだろう…」
「本当何処に連れて行かれちゃったんだろう千鶴ちゃん。それにちょっと遅いよね……。土方さん、千鶴ちゃんに何もしてないと良いんだけど」
「んなこと総司や左之さんじゃあるまいし土方さんがするわけないじゃんっ!」
「そんなの分からないよ。土方さん昔相当遊んでたし」
「えっ!?マジで!!」
「総司、でたらめを言うな」
「デタラメじゃないよ。土方さん昔は女の人とっかえ――」
「おい、総司!てめえ何、嘘ついてやがる!!」
「うおっ!?ひ、土方さん、いつの間に…」
機嫌が悪そうに腕を組み、いつの間にか自分たちの背後にいた土方に驚き平助は目を丸くする。
隣に千鶴の姿は見当たらない。
「あれ〜本当のことじゃないですか。昔よく違う女の人連れてたじゃないですか」
ニヤニヤとイヤな笑みを浮かべ土方に向ける。
「て、てめえ…」
「なんならもっと色々話しましょうか♪」
「総司!!てめえは一回ボコボコにしごかれてーみてえだなあー!!」
「ははは、いやですよ〜。せっかくのX'masに土方さんと2人きりになるなんて気持ち悪いです」
「表にでやがれーー!!」
「土方先生、落ち着いてください!このままでは総司の思うつぼです」
「斎藤離せ!今日という今日はあいつを殴らねえと気がおさまらねぇ」
「あはは、PTAに言いますよ〜」
てめー、と今にも沖田を殴りかかりそうな土方を斎藤が一生懸命止める。
そんな図を平助は平和だなぁ〜と黙ってみていた。
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