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□X'masパーティー 前編
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時は少し遡り――…
体育館に着いた千鶴は近藤が控えている部屋に案内され土方とそこで別れた。
「おお、雪村くん!うむ!!実に似合っている!!」
千鶴のドレス姿に近藤は満足そうに柔らかい笑みを向けうんうんと頷き、その様子に千鶴は頬を赤く染めた。
「あ、ありがとうございます。あの…これから何かあるんですか?」
「んっ、おお、そうか!雪村くんには内緒だったか」
すまんすまんと笑いながら謝られてしまって千鶴もクスッと笑みを溢した。
「よし、では行くか」
「何処かに行くんですか?」
「ああ、俺に着いてきなさい」
「はあ…――」
訳がわからないが千鶴は近藤に素直に着いて行くことにした――。
…………
――やっと静かになった体育館。
「なあ土方さん、ところで千鶴はどうしたんだよ?」
「千鶴?…ああ、あいつなら近藤さんの処だ」
「近藤さんの?…なら僕も行ってきます♪」
「お前はここにいやがれ!」
「嫌ですよ〜。千鶴ちゃんも近藤さんも居なかったら僕がここにいる意味がありませんし」
「「「………」」」
「…あんたは本能に忠実だな…」
「さすが総司、だよな…」
「はあ…」
スパッと言い切られ、土方たちはただ呆れるしかなかった。
そこへ離れていた原田と永倉が近づいてきた。
「――おっ、みんなして集まってなに話てんだ?」
「あ、左之さん、新八っつぁん」
「なんだ、なんだ。飯の話か」
「新八さんじゃあるまいし違いますよ」
「何!?こーんな旨そうな飯を前にしてお前らはつまんねえなぁ」
年がら年中飯のことと競馬のことしか考えていない人間に言われたくないと全員冷たい視線を送る。
「――なあ土方さん、千鶴はちゃんと着たのか?」
「…ん、ああ、まあな」
「なんだよ、その反応は。…もしかしてあまりにも可愛くなりすぎちまったか?」
「………」
「おっ、図星か。なら今から楽しみだな」
原田はニッと意味深な笑みを土方に向ける。
その真相を知らない生徒たちは2人を交互に怪訝な瞳で見つめた。
「ち、千鶴がどうしたんだよ!」
「土方先生、一体なんの話ですか?」
「2人して千鶴ちゃんに何かしたんですか?いやらしい〜」
「「するわけねーだろうが!!」」
「俺たちは千鶴にプレゼントを――」
「原田!!」
つい話そうとしてしまった原田を土方の怒声が遮る。
その声に原田は肩をすくめ、ヤベッと口に手を当てた。
「あ、とっとっ。すまねえ、土方さん」
「ったく…」
「プレゼント…もしかして千鶴ちゃんを物で釣って何かしたんですか?」
「だから、なんで何かすんだよ!てめえはそんなに俺を犯罪者にしてえのかっ!!」
「え〜、土方さんならやりそうじゃないですか〜」
「てめえって奴は本当に…」
「まあまあ、土方さん!もうすぐ分かるんだしよっ!!」
「おい平助、左之と土方さんは一体何の話をしてんだ?」
「って俺が知るかよっ!新八っつぁんのが一緒にいる時間長えーじゃん!一くんは何か分かった?」
「…どうやら土方先生と左之が雪村に何かプレゼントを贈ったらしい…先を越されたか…」
「「な、何だと!?」」
平助、永倉が声を揃えて驚いた時後ろから少し焦りの声が聞こえた。
「土方先生、失礼します」
「ん、ああ、山崎か。どうした?」
「お話し中、申し訳ありません。実は…」
『――!!』
土方に歩み寄った山崎がこそこそと耳打ちをした。その途端、土方の表情がみるみる険しくなった。
「それは本当か…」
「はい、こちらに向かってきています」
「…そうか、ご苦労だったな」
「いえ…」
「原田、新八、ちょっと来い」
「はいよ」
「え、飯は?」
「んなの、後だ!後!!」
「そ、そんな〜!?」
土方、原田が嫌がる永倉を引っ張っていくのを静かに見つめる一同。
それを見ていた山崎が、では失礼します、と会釈をしてその場を立ち去ろうとした。
しかし沖田と平助の2人に両腕を掴まれてしまった。
「「山崎く〜ん」」
「ちょっ、お、お二人とも放して下さい!!」
「ねえ、さっき土方さんに何言ったの?」
「あなたには関係ないことです」
山崎はキッと沖田を睨みつけるがそんなこと沖田に全く効く筈があるわけなくケロッとした態度で応える。
「まぁ大体予想はつくけどね」
「えぇー!?俺はまったくわかんねー!山崎くん何?何の話したの!?」
「と、藤堂さん、ちょっ、や、止めてください!」
平助におもいっきりぶんぶんと体を揺すられた山崎はふらふらする頭を支え、2人と距離をとる。
「山崎、あの方に一体何を言った。俺には風紀委員としてそれを知る権利がある」
「うっ、斎藤さんまで…」
「あ〜、一くんずりぃー!」
「さらっと職権乱用を使うよね」
「くっ…」
額に汗を浮かべ後ろに下がる山崎。それをジリジリと追う3人。
……だが中々話そうとしない山崎に沖田がため息をついた。
「君も本当頑固者だよね。…そうだ!山崎くん、教えてくれたら良いものを君にあげるよ」
そう言うと沖田は自身の胸元からスッと何かを取り出し山崎に見せた。
それを見た途端、ぽっ、と山崎、斎藤、平助の表情が赤く染まった。
「そ、それは…!!」
「ち、千鶴のスク水写真…!?」
「な、何故あんたがそれを持っている!」
「あ〜もう。2人が入ってきたら話が進まないから」
「…俺だって欲しい…」
「………」
「で、山崎くん。話してくれるよね」
「…や、やむを得ないですね…。わかりました…」
にっこりと微笑む沖田に山崎はついに観念し、事の成りゆきを語り始めた。
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