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□X'masパーティー 後編
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――…その時


「皆さん、そこまでですよ」

パンパンと手を叩く音と聞き覚えのある声が聞こえ、皆一斉にそちらを振り返る。

白い白衣に身を包み、暗い中だというのに妖しく光り輝く眼鏡。
その人物が直ぐに誰だか分かり、その名を呼ぶ。

「「「さ、山南さん!?」」」

「女の子を泣かせるなんて皆さんには困ったものですね」

優しい笑み、そして口調だが威圧感を感じ皆ぐっと口をつぐむ。
その後ろからは近藤が千鶴に近付き、彼女の無事を確認し安堵の色を見せる。

「雪村くん!大事ないか!?」

「は、はい!ご心配おかけして…申し訳ありませんでした!!」

「いやいや、雪村くんは何も悪くない!悪いのは不甲斐ない俺だ」

近藤のが泣きそうな顔で千鶴に謝罪の意を見せて頭を下げる。
その様子に千鶴は目を丸くして焦る。

「そ、そんな事ありませんっ!近藤先生、頭を上げてくださいっ…」

2人のやり取りを見ていた土方が眉間に皺を寄せて山南に近づく。

「おい、山南さん」

「どうしたんですか、土方教頭?怖い顔をされて」

「元はと言えばあんたが原因だろ」

「おや、なんの事ですか?」

「すっとぼける気か?」

「人聞きの悪いことを言わないで下さい」

バチバチっと土方、山南の2人の間に火花が飛び散る。
一同はそんな2人をまた始まったと見守る。

「今回の件を勝手に進めたのはあんただろう」

「なんの事でしょうか?」

土方の眉間に皺を寄せたしかめっ面とは正反対ににっこりと優しいが裏がある笑みを見せる山南。

「ネタは上がってんだ。あんたが勝手に風間と手を組んだってことをな」

土方の目は風間に向けられる。風間も負けじと目を細めて土方を睨み返す。

「私が風間くんと?」

「ああ」

いつまでも白々しくする山南に土方の怒りも限界に近づく。
その土方の態度に気がついているのか山南は変わらず笑みを浮かべている。

「保険医の私がその様なこと――」

「山南さんっ!!」

土方の怒りの声色が響き渡る。皆その迫力に息をのみ土方を見つめ、山南はやれやれと苦笑を浮かべて眼鏡をかけ直す。

「はあ……確かに風間くんとその様な話しにはなりましたが、私は雪村くんを売ったつもりはありませんよ」

「何?」

山南の発言に反応して先ほどまでの余裕のある顔とは一変して珍しく焦り始める風間。

「おい保険医、話が違うぞ」

「私は風間くんに“ただの相談”をしただけですよ」

「何…だと…貴様どういう事だ」

今にも山南に食ってかかりそうな風間を押さえ、土方は問いかける。

「風間少し黙りやがれ!…山南さん、詳しく説明して貰おうじゃねぇか」

「……わかりました。先程も言った通り、私は風間くんにただの相談をしただけです」

「貴様…よくもぬけぬけと」

怒りを露にして端整な顔が歪む。だが山南は顔色一つ変えずに続ける。

「教育者と生徒の密売は禁止に決まっているじゃありませんか。
公になったら貴方もただじゃすみませんよ」

「くっ…!」

「それに勝手に貴方が勘違いをして学園に援助をしてくれたんですよ。その事についてはとても助かりましたよ、風間くん。本当にありがとうございます」

「…っ!!」

怒りに震え、納得いく筈もない風間にニッコリといつもの笑みを向ける。

「山南先生…」

「うわー…俺、初めて風間に同情したかも…」

「俺もだ…」

「流石山南さんだよね、腹黒い」

「全くだ。あの笑顔がコエェーよ。くわばら、くわばら」

「ありゃ、絶対敵に回したくねぇ相手だな」

今までの経緯を黙って見ていた者たちは、ひそひそ話をしながら『山南を敵にするべからず』と云う教訓を心に深く刻みこんだ。


こうして風間の『嫁』との野望は儚く散り、今回の件は静かに幕を閉じたのであった――…。





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