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□X'masSS
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-サンタは要らない-




「さて、帰るとするか…」

書き終わった日誌をしまって、俺は呟いた。

二学期の最終日。巷ではクリスマスイヴと呼ばれる日のせいか、いつもより、生徒の下校が早い。

人気のない廊下は、いつも以上に冷える気がした。

首を竦めながら、準備室を出て歩くと窓の外に白いものがチラチラと落ちていくのが、視界の端に映った。

「冷えると思えば、雪が降ってんじゃねぇか…」 

窓に近付くと静かに雪が落ちていくのが見える。

空から落ちていく雪の軌跡を追いかけた先に。

あれは…



「千鶴?」

背後から名前を呼ぶと、ゆっくりと千鶴が振り返る。

「あ…原田先生…」

「こんな時間迄、何やってんだ?」

「忘れ物を…忘れ物を取りに来たんです。そうしたら、雪が降ってきて。綺麗だなぁ…って」

そう言って再び空を見上げた千鶴につられて俺も落ちてくる雪を見上げた。

「ホワイトクリスマスってやつだな」

「そうですね」

掌で雪を受け止めながら、千鶴が無邪気な笑顔を見せる。

「ちゃんとサンタクロースにプレゼント頼んどいたか?」

「…先生。もうそこまで子供じゃないですよ」

くすりと浮かべた笑みは、少しずつ空を支配し始めた夕闇が作り出す影と、雪のように白く浮かび上がる肌色のせいか、いつもより大人びて見えた。

「それに、サンタクロースじゃ、私の欲しい物は貰えないですから…」

「サンタでも無理なんざ、随分贅沢なプレゼントが欲しいんだな」

俺が肩を竦めて言うと、クスクスと笑いながらはい、と千鶴は答えて、再び落ちてくる雪を両手で受け止める。

そうして掌に落ちてきたひとひらの雪をそっ…と、もう片方の手で包み込むように蓋をした。

「…心が、欲しいんです」

「心?」

「はい。心…」

愛おしそうに蓋をした雪を見つめていた瞳が、ゆっくりと俺の方に向けられる。

「目の前に、居る人の」


静かに、雪が舞い降りる。

千鶴の言葉以外、全ての音を消し去るように。


「…そりゃあ、サンタには無理だな」

そう言いながら、ゆっくりと千鶴に近付く俺の口許に、三日月が浮かび上がる。

手を伸ばして千鶴の頭を自分の腕に包み込んで引き寄せると。

「それは、もうとっくにお前のもんになっちまってるからな…」

腕の中にすっぽりと収まった千鶴の耳元で、俺はそう囁いた。

-- 了 --





素敵サイトさま『徒然櫻』井堀さまよりフリーでしたので頂いてしまいました〜(^-^)/
井堀さま!誠にありがとうございます☆

井堀さまの左之さん…大好きです(*^^*)
男らしくてニヤニヤしちゃいます(つ´∀`)つ
…はぁ…カッコいい…☆

ありがとうございました〜☆

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