Get
□大好き
1ページ/1ページ
…どれ位、好き?
「どれ位、かぁ…」
「何が、どれ位なんだ?」
「きゃうっ」
誰にも聞かれていないと思ってぽつり…と呟いた言葉に返事が返ってきて、文字通り私は飛び上がった。
ドキドキしながらソファーのクッションをきゅうっと抱きしめて振り返れば、濡れた髪をバスタオルで拭きながら左之助さんが私の側へと歩いて来る。
「んなにびっくりさせちまったか?俺に聞かれたらマズイ事でも呟いてたのかよ?」
悪戯な笑みを浮かべてするりと隣に座る左之助さんに、私はフルフルと首を横に振った。
「…で、何がどれ位なんだ?」
「あ、ええとですね。お昼休みに会社の女の子が、好きな人の気持ちがどれ位か測れて、数値化できたらいいのに、って話をしていたんです…」
そう言って、今日のランチタイムのお話をすれば、左之助さんは形の良い切れ長の瞳を優しく細める。
私は左之助さんのこの表情が大好き。
嬉しくて、ついたくさん話してしまうのだけれど。
「…という訳なんですけど」
「成る程ねぇ…で、あの独り言か?」
「はい」
話が一段落して、ふぅと私が息を吐くと左之助さんが持ってたミネラルウォーターを差し出してくれる。
「…で、千鶴はどうなんだ?」
コクリと一口飲んでもう一回、ふぅっと息を吐くのを待って左之助さんが口を開いた。
「え…?」
「だから、千鶴は好きな奴の気持ちが測れたらいいと思うか?」
「私は…イヤ、です」
左之助さんの言葉に少し考えてから、再度私はふるふると首を横に振る。
「だって…測る事ができて、数値化されてしまったら…その数値よりもっと好きになってほしいって、きっと思ってしまうから…」
…そんな醜い気持ち、左之助さんには見せたくないです…。
そう小さな声で言ってから。
膝に載せたクッションに視線を落とすと、左之助さんの手が優しく肩に回されて、ゆっくりと温かな胸の中へと閉じ込められる。
「俺は、あっても役に立たねぇと思うけどな」
「え…?」
顔をあげると、綺麗な琥珀の瞳とぶつかって。
「どんだけ大きな数が測れたとしても、一瞬でメーターの針を振り切っちまう自信があっから、んなもん、役に立たねぇよ」
「左之助さ、ん…」
頬を包む大きな掌から伝わる熱が、身体中に伝染していく。
「測れる程度の気持ちだと思ってんのか?お前を好きだって気持ちが…」
掌がゆっくりと頬のラインを伝って顎へと降りて。
「分かってねぇんなら、教えてやるよ。どれだけ俺がお前に惚れてるかって事」
そう言って、口の端を軽く歪めて艶やかな笑みを浮かべる。
「かわりに千鶴が俺の事をどんくれぇ好きか、聞かせてもらうからな?」
「…いいですよ…」
琥珀の中に見える熱に魅入られたように自分の瞳は釘付けにされたまま、私も笑みを浮かべて、左之助さんの手に自分の手を重ねる。
「左之助さんを好きって気持ちなら、誰にも負けませんから。…左之助さんにも、ですよ」
「上等じゃねぇか」
二人でもう一度笑ってから。
重ねられていく口唇に、私は静かに瞳を閉じた。
--了--
素敵サイトさま『徒然櫻』井堀さんよりサイト1周年記念フリーSSを頂戴しました!
井堀さん!おめでとうございます!!
こんなにラブラブな2人…
もう見ていてお腹一杯です(*´∇`)
さのちづサイコー\(^o^)/
素敵なSSをありがとうございました!!
サイト1周年
本当におめでとうございます!