short story2
□とあるお菓子
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※下ネタが含まれます。
苦手な方はお戻りください。
───薄桜学園、職員室。
生徒から没収した様々なお菓子をどうしたものかと見つめる土方。
そこに騒がしい2人の同僚がやって来た。
「はあ…」
「よっ、土方さん!何、ため息なんか吐いてんだ?おっ、土方さんにしては珍しいモン沢山持ってんじゃねぇか!」
「ばーか、新八。土方さんが駄菓子なんて食うわけねーだろ」
「左之、馬鹿とは何だ!馬鹿とは!!こう見えて俺は学が───」
「あー、はいはい。その話は何百回も聞いたからもう聞き飽きたぜ」
「聞き飽きた…だと!!左之、お前は俺のことをまるっきり分かってねえ!」
「おい…」
「お前のことなんて分りたくもねえよ」
「何!?お前は俺と親友だろうが!!」
「親友?悪友の間違いだろ!」
「うるせえー!!新八っ!原田っ!!さっきからてめえらは人の頭の上でごちゃごちゃと、うるせえんだよっ!!喧嘩すんなら外でやりやがれっ!」
「うおっ!わ、悪かったって。そー、怒んなって」
「たく、良い大人の癖しやがって。少しは静かにしやがれってんだ!」
「まあまあ──。で、その菓子は大方生徒から没収したモンなんだろ?」
スナック菓子、チョコレート、アメなどの様々なお菓子を指差す。
「はぁっ、馬鹿どもが隠し持っていたから没収してやった」
「没収ねえ…(相変わらず真面目だな…)」
「なんだ、原田。何か言いたそうな顔しやがって。文句でもあるのか」
「えっ!?い、いや、別に何でもねえよ(機嫌わりいな…こんな時総司が来たら…)」
ガラッ───。
職員室の扉が開き、そこには学園の紅一点の千鶴が立っていた。
「失礼致します」
綺麗にお辞儀をして入ってくる千鶴。教師たちはその姿にほっと胸を撫で下ろし、優しい眼差しを千鶴に向けた。
男ばかり見ている土方たちにとっては癒しの存在。
ホッとしたのもつかの間、直ぐ様、土方の眉間にはシワが寄り、原田は嫌な予感が当たったと深いため息をついた。
「あっ、新八っつぁんに左之さん!」
「ふあ〜、眠い」
その原因とは…千鶴の後ろからは騒がしい学園の問題児、沖田と平助の2人もが職員室に足を踏み入れてきたからだ。
あからさまに嫌そうな顔をする土方。
これから起きるであろうことが想像出来て、原田は苦笑いする。
生徒が来てくれたことに嬉しそうに笑顔を向ける永倉。
様々な対応を見せる。
「チッ…」
「はは…(やべえな…)」
「よお!どうした?千鶴ちゃんに平助に総司。3人で来るなんて珍しいな」
「土方さん、何ですかその顔。可愛い生徒がわざわざ来てあげたのに、僕たちを見た途端に嫌な顔をしましたよね」
「何が可愛い生徒だ!!しかも呼んでねえっ!お前らは問題ばっか起こす問題児だろうが!?」
「失礼ですね〜。僕は土方せんせいにしかやりません!」
「余計タチが悪いだろうが!!」
バチバチと火花を飛ばし合う2人。
2人を見て、どうしようと苦笑いする千鶴に原田は近付き“気にすんな”と頭を良い子良い子するように優しく撫でる。
それに気が付いた平助が原田に噛み付いた。
「あー、左之さん!何、勝手に千鶴に触ってんだよ!!」
「左之さん、セクハラで訴えますよ」
「おい、少し触ったぐらいでセクハラ扱いかよ…」
「原田、お前は雪村をいつも触りすぎなんだよ」
「そうだぞ、左之!この、羨ましいやつが!!」
「新八、お前…」
「あ、あの…!」
「千鶴ちゃん、どうした?」
「えっと…私、今日日直でしたので日誌を渡しに…」
胸元で大事に抱えている日誌を土方に手渡す。
「ああ、そうだったな。ご苦労だったな、雪村」
「いえ。…わあ」
土方の机のお菓子に気が付き、千鶴は瞳を輝かせる。
その声に平助も近づいてきてそちらを見つめる。
「どうした、千鶴?うわ!すげえ!!」
「凄いお菓子ですね」
「それは土方さんが生徒から没収したモンなんだとよ」
「没収ですか?」
「まあな…って総司!てめえ、何、勝手に食ってやがる!!」
「モグモグ───。これから部活なんで、腹ごしらえぐらいさせてくださいよ」
「えー、総司1人だけずりー!俺も頂きっ!」
「へ、平助くん、ダメだよ」
「ふぃじかたさん、これ、うまいな、モグモグ…」
「新八、お前までなんで食ってんだよ」
「1つぐらい良いじゃないですか、減るもんじゃないし。土方せんせいは相変わらずケチですね」
「お前らが食ってんだから減るに決まってるだろうがっ!!」
またも沖田に遊ばれる土方。
いつもの事かと苦笑して原田は千鶴の好きそうな甘いお菓子を手渡す。
「やれやれ…。千鶴、お前もほら。好きなもの食って良いぞ」
「え、でも…。没収した物を勝手に頂くなんて…」
「遠慮すんな。あいつらも食ってるから大丈夫だって」
「…では、原田先生のお言葉に甘えて頂きます。ありがとうございます」
「良いってことよ」
ニッと千鶴に笑いかける原田の後ろから疲れきった土方がため息をつく。
「原田、お前までなぁ…」
「たまには良いじゃねえか。千鶴は普段校則を守って良い子なんだからよぉ」
「はぁ…たく」
「──千鶴ちゃん、千鶴ちゃん」
沖田に手招きされ、千鶴は何も疑わずに近づく。
「何でしょうか、沖田先輩?」
「はい、あーん」
沖田はポッキーを千鶴に向けた。まさかあーんされるとは思わず、千鶴は驚きに目を丸くする。
「え…あ、あの…」
「ほら早く口開けて」
「えぇっー…!?」
「そ、総司っ!何、1人だけ美味しいことしようとしてんだよ!!ずりー!!」
「総司、お前いくら何でも職員室でなんて羨ましいことを…」
「新八、本音が出てるぞ」
「阿呆だな…」
ガラッ───
「失礼致します」
「今度は、誰だ…。って、斎藤か」
斎藤も綺麗に礼をして職員室の中へと入ってくる。
「やあ、一くん」
「総司に平助…雪村もか…」
「お疲れ様です。斎藤先輩」
「ああ。あんたもな」
「斎藤、見廻り、ご苦労だったな」
「いえ風紀委員として当たり前の事をしたまでですので」
「かー、斎藤は相変わらず真面目だよな」
「だな。誰かに爪の垢を煎じてやりたいな」
「何で、こっちみんだよ!」
「平助だからね」
「はぁ?俺だけじゃなくて、総司お前も見られてるからな!」
「どっちもどっちだな」
「───土方先生、これは一体…」
土方の机の上のお菓子に気が付き、普段の彼からは想像がつかないといった表情。
「土方せんせいが生徒から無理矢理奪ったんだよ」
「人を極悪人みたいに言うんじゃねえ!」
「成る程。風紀が乱れる故、先生は当たり前の処置をお取りになったんですね。…ならば、何故皆でそれを食しているのですか」
「一くん、堅いことは良いじゃん!一緒に食おうぜ!!」
「まだ食って良いとは言ってねぇだろうが!!」
「あれ〜、千鶴ちゃんは良くて僕たちはダメなんですか。土方せんせいはやっぱ───」
「ちげえよ!!」
「雪村、あんたも貰ったのか」
「は、はい。原田先生に頂きました」
「千鶴は真面目だからな。斎藤もどうだ?」
「いや、俺は菓子など食さない故、結構です」
「千鶴ちゃん、さっきの続きしよ。はい、あーん」
沖田は再度千鶴にとあるお菓子を向けた。
とあるお菓子とは“○まい棒”と言う安くて美味しい駄菓子。
子供の頃、誰もが口にしたことのあるであろう駄菓子。
「お、沖田先輩っ…!?」
「総司、あんたは雪村になんて如何わしいことをしようとしている」
「ふぅん。一くんは見たくないの?千鶴ちゃんのあーんした姿?」
「雪村のあーんした姿…だと…」
「あっ、一くんが総司の罠にハマった」
「斎藤のやつ、意外とムッツリだからな」
「だな。あの無表情からは見えねえのがスゲーよ」
「てめぇら、此所が職員室ってこと忘れてるだろう」
「ねぇ、一くんは見たくないの?千鶴ちゃんがこれを可愛く【くわえる姿】」
「お、沖田先輩っ!?」
千鶴は困惑して眉をハの字に下げる。頬も恥ずかしそうに桃色に染まり、その姿がなんとも可愛らしい。
「……見たい」
「って、おい、総司!一くんを巻き込むなよ!」
「でしょ、なら口出ししないで黙って見てなよ」
「無視かよ!」
「はい、千鶴ちゃん。あーん」
「ほ、本当にしないと…ダメですか…?」
「うん。センパイ命令」
「うっ…」
“先輩の命令は絶対”と前に沖田に教えられた千鶴。
皆の前で“あーん”なんて行為恥ずかしいが疑うこと無く従わないといけないと思い込んでいる。
「はい、あーん」
「あ…あーん…」
パクッと、瞳を潤ませ恥ずかしそうに頬を染めながら沖田の差し出した○まい棒を口にくわえた。
「「「そ、総司!?」」」
「てめぇ!!それが狙いか」
「おい、流石に…やべぇだろ…」
「クスッ。千鶴ちゃん、まだ口を離さないでね。くわえたまま、僕を見て」
千鶴は言われた通り、オズオズと視線を上に向けた。
背の高い彼らにしてみると千鶴が上目遣いをして奉公しているように見える。
「「「「そ、総司───!!」」」」
周りが顔を赤くして怒鳴るのを気にせず、千鶴の恥じらいながら【とあるお菓子をくわえる姿】をカシャッと携帯で楽しそうに撮影する沖田。
千鶴は皆が何故怒鳴ったのか1人理解出来なかった。
その後沖田の撮影した画像をこっそり“くれ”という人物が何人もいたのは言うまでもない───。
end
あとがき→