short story2

□千鶴せんせい
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桜が満開な春の時季…


【桜学園】───男子校。


そんな桜学園に新任の若い教師がやって来た────。


頬を桃色に染め、少し緊張した面持ち。
そして大きな瞳がキラキラと期待に輝いている。
サラサラの髪は左側にながしシュシュで1つにまとめ、身体全体的からはふんわりとした優しいオーラがにじみ出て見える。


「は、初めまして、皆さん。皆さんの担任を勤めさせて頂きます、雪村千鶴と申します。
教師になったばかりで頼り無いと思いますが、これから頑張りますので、どうか宜しくお願いします。
悩みごと、些細なこと、何でも良いので何かありましたら直ぐに私に言ってくださいね」


教壇から宜しくお願いしますとペコリとお辞儀をする。

スーツを着ているがその姿は似つかわしくなく、容姿、背格好、どれをとっても自分達より年下に見える彼女。

クラスの男子たちは、千鶴の話を聞いてはいるもののニヤニヤと鼻の下を伸ばしながら若く可愛い担任の千鶴を見つめていた。


だが、生徒たちの中にはそんな彼らとは違う態度をとる者たちがいた────…。


「う…そ…」

「千鶴…か?」

「あの顔は、どう見ても千鶴ちゃんだよね」

「な、何故…」

「おいおい、マジかよ!?」

「はぁ…頭がいてぇー…」

「ほぉ…」


クラスの中で、その容姿が一際目を惹く彼ら────。


元新選組+元鬼の頭領の生まれ変わり……。


彼の動乱の時代───。
目の前で気恥ずかしそうに恥じらいながらもニコと笑みを見せる彼らの担任と名乗った、【雪村千鶴】と深く関わりがあった。


あの時は年齢が違った彼らだったが何故か転生した現在では、皆が同い年で、しかも驚くことに全員クラスメイトという奇跡────。


この平和な世に転生し、記憶まであるのには驚いたが、これも前世での腐れ縁かと、今は運命を受け入れ昔と同じく皆接している。


だが1人出逢うのが遅かった【千鶴】が教室に入ってきた時は見間違いではないかと目を疑った。


絶対に忘れる筈もない、容姿、話し方、声、雰囲気、そして決定的な彼女の名前────。


それを聞き、やっと廻り逢えた事に未だ信じられないといった眼差しで各々目の前の千鶴を直視する。


「はいはーい!せんせー、彼氏はいますかあ?」

「ばーか、いるに決まってんだろ〜」


彼らの近くに座るクラスメイトが在り来たりな質問をする。
それに他の生徒まで悪のりし、そういった質問を投げ掛けてくる。


「えっ…!?あ、あの…」


「千鶴ちゃ〜ん、俺と付き合ってー」


「なーに言ってんだよ。俺に決まってんだろう!」


桃色の頬を更にポッと朱色に染め、オロオロと戸惑いの色を見せる。
その仕草が可愛らしく、思春期の彼らには堪らないらしく、更に質問攻めに合う。


「……なにこれ。何だが物凄くイライラするんですけど」

「って、千鶴ちゃんが俺らの担任!?マジなのか?いや、やっぱり夢か?おい、平助!!……これ、イテーか?」

「いってぇー!!新八っつぁん!!何で俺を殴んだよっ!!」

「…こりゃ、夢じゃ無さそうだな」


クラスの異様なまでの盛り上がりに笑顔で苛つきを見せる沖田。
まだ信じられないと、目の前に座る平助の頭をこずく永倉。
その行為が痛かったらしく、平助は涙目になりながら永倉に抗議する。
そんな2人を見て原田は苦笑を洩らす。


「千鶴が…担任…」

「はぁー…、俺たちだけじゃなく、あいつまでこの学園に引き寄せられるとは、な…。まったく…。しかも年上、かよ…」


冷静な斎藤が珍しく瞳を見開いて驚きを隠せないでいた。
土方は前世からよくする眉間にシワを寄せる癖をして、これから彼女の周りで起こるであろう大変なことが安易に想像出来、高校生とは思えない疲れた顔を見せる。




「み、皆さん落ち着いてください」


すっかりクラスは担任の千鶴に盛り上がり色気付いている。



そんな中、1人────。


騒ぎ出すクラスメイトたちとは違い、まるで高校生とは思えない落ち着いた雰囲気の学校指定ではない白い学ランに身を包んだ───


あの【風間千景】がスタスタと千鶴の立つ教壇へと近づいて来た。

その行為にキョトンと風間を見つめる千鶴。


「我が妻よ。やっと嫁になる為に俺の元へと来たか」


「…えっ!?」


『はっ…?!』


「「「「「「バ風間っ!!!」」」」」」


先程まで騒がしかったクラスは風間の意味の分からない言葉にシーンと静まり返り、ポカーンとした顔で風間と千鶴を交互に見つめる。


しかし直ぐに元新選組の彼らがその行動に怒りを現し、千鶴と風間の距離を離す。


「おい、貴様ら。俺は今、妻と感動の再会をしている。前世だけでは飽き足らず、現代までも邪魔立てする気か」

「はあー!?千鶴はお前の妻になんか、なってねえしっ!!」

「本当、勘違いも甚だしいよね」

「一度、あんたは頭の中を調べるべきだ」

「くっくっ、ちげーねえ」

「斎藤、良いこと言うじゃねえか!」

「あ、あの、皆さん、お、落ち着いて…」

「貴様らにはあの時代より、更に酷い仕打ちをするしかなさそうだな」

「へっ、てめえにやられる前にこっちがボッコボコにしてやるよ!!」

「アハハッ、流石性格の悪い土方さんですね。でもその意見には賛成です」

「総司、相変わらずてめぇは一言多いんだよ」

「よし!そうと決まったら、風間ー!表に出やがれ!!」

「えぇぇーーっ!?あ、あの…」

「ほぅ…よかろう。返り討ちにしてくれる」

「その言葉、そのままあんたに返そう」

「生真面目な斎藤が珍しく、すげぇやる気だな。ま、俺も負けねえがな」

「なら左之!やってやろうぜ!!」


制服の袖を捲り上げ、バチバチと火花を散らす新選組vs風間───。


顔色を真っ青に変える千鶴。
話が勝手に進み、今彼らが何を話しているのか良く理解できずにいた。
他の生徒たちも同じく、また始まったか、とただ呆然とするしかなかった───。




雪村千鶴、初めての担任。


前途多難である────…。





To be continued────?


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