clap story
□熱のせい?君のせい?
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俺、藤堂平助。
今朝からなんか体調が悪かった。
でも土方さんに知られたら
『幹部の癖に体調管理もできねぇのか!』ってきっと怒鳴られる…。
だから気付かれ無いように無理に朝食を取っていた。
「………はぁ」
「おっ、どうした平助?もしや飯要らねぇのかっ!?」
やっぱり調子が良くない…。
今日は千鶴がせっかく作ってくれた飯なのに…喉を通らない。
しかも新八っつぁんは気持ち悪いくらい瞳を輝かせて、人の飯に箸を突っ込んでくる。
「あっ!!ちげえよっ!ただちょっと考え事してただけだよっ!!」
捕られまいと必死におかずを庇う…が既に遅かった。
「油断しているお前が悪い!」
ムカつくぐらい爽やかに白い歯を見せつけてくる。
そんな新八っつぁんを構うのも、だるくて諦めた。
「平助くん、どうしたの?なんか食欲ないけど…美味しくなかったかな?」
隣に座っている千鶴が俺を心配そうに小首を傾けて上目使いに訊ねてきた。
ーーーかっ、可愛い…。
無意識にやるからこれがまたタチが悪い…。
「えっ!っんなわけないじゃんっ!!千鶴の飯はめちゃくちゃ美味いよ!!」
「でも…食欲ないみたいだけど…体調悪いの?」
「!!」
(…まっ、まずい…。せっかくバレないようにしてきたのが水の泡になる…)
心配そうに見つめてくる千鶴に申し訳なさそうに言い訳をする。
「えっ?!いっ、いや、昨日夜の巡察行ったら疲れちまって…」
ははっと空元気を見せると千鶴は、心配そうに疑ったように眉を寄せて、『なんだがいつも見ていた瞳よりかなり大きく見えるな』、っと思っていたら、顔が近づいてきた。
そして…コツンと優しく、俺と千鶴のおでことおでこがくっついて…。
…俺は思考回路が止まり身体を固まらせた。
「…!!!」
「あっ、やっぱり熱がある」
「「「………っ!!」」」
もぉ無理して、っと可愛らしく唇を少し尖らし顔を離した。
その場の皆は箸を落としたり固まったり驚きのあまり目を見開いたり様々だった。
「土方さん、私、平助くんのお布団敷いてきます!」
そんな皆の様子になど気付かず、ペコリと土方に一礼しパタパタとその場を出ていった。
「…何…今の…」
「平助てめぇ!!」
「………」
「朝から羨ましいな…平助」
「雪村くんは意外と積極的だなぁ、なあ、とし」
「………」
俺は未だに今された事が突然すぎて…顔は勿論のこと一気に熱が出て固まっていた。
周りの皆の怒りと嫉妬と殺気が入り交じった視線が怖い程伝わって来る…。
「ワザと狙って体調悪そうにしたんだよね。これは平助を斬って良いよね…♪」
「ちくしょう!羨ましい!!羨ましすぎるぜ、平助!!だから飯は俺が貰う!」
「風邪が移っても知らねえぞ新八。さて、覚悟は出来たか平助?」
「平助…其処になおれ」
「…切腹だな」
面々が恐ろしい事を言って、俺の近くに来ているのに体調が悪いためか先ほどの千鶴の行動のためか未だに動けない。
近藤さんが何やら言っているが段々と聞こえなくなってきた。
やっぱり体調が悪いと、最初から正直に言っておけば良かったと後悔した平助であった……。
end
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