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□土方先生の毎日
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薄桜学園、職員室。


教師達は黙々とテストの採点をしていた。


「なぁ土方さん」

「あっ、何だ原田」

「…なんで、はなから喧嘩腰なんだよ…」

「ちっ…これ見てみろ…」

不機嫌な顔でペロッと答案用紙を原田に見せる土方。

「あぁ…また総司か…」

ハハッと乾いた笑い声をあげる保健体育教師の原田。

「あの野郎…毎回毎回、俺の教科のみふざけやがって!」

古文教師兼教頭の土方。
彼の煙草の煙がモクモクと職員室に広がる。
今のご時世、禁煙なんてこの怒れる古文教師には全く関係ない。
逆に最近では、だんだんと本数が増えるばかり。

「っま、総司のやつは土方さんにしか迷惑かけねぇからな…」

「ったく、あいつの悪ふざけにはもう付き合ってられねぇ」

「俺も付き合ってられねぇぜ!もう競馬は…競馬ばああああ」

急に出てきて勝手に競馬について熱くなる数学教師の永倉。
そんな永倉が更に土方の苛つきを煽り華麗な足蹴が飛んだ。

「新八っ!てめぇいい加減に学校で賭け事するんじゃねぇって言っただろう!!」

「………」

「新八…お前のことは忘れないぜ」

綺麗に土方の足蹴が永倉に決まり永眠………。
原田はそんな永倉に手を合わせていた。



「ったく。生徒が生徒なら教師も教師だ」

「総司ぐらいじゃねぇか問題児は。っあ、もう一人忘れてたか」

「…あいつ、いつまで学生気分でいやがる気だ」

心底嫌そうな顔をする土方。
あいつとは土方と元同級生の現薄桜学園の生徒会長の風間千景。
嫁をGETするまで卒業しないと言う彼。


「良い年して白ランはねぇよな」

「良い年で悪かったな、原田」

「あっ、いや、土方さんに対してじゃねぇよ」

「…何が嫁だ」

風間が言っている『嫁』という台詞をケッと悪態つき、採点を再開する。

「千鶴も厄介な奴に目をつけられちまったよな」

「………」

ぼやいている原田に目もくれず、仕事を進める土方。



「……きゃー!こっ、こないでくださーい!!」

突如、職員室の外の廊下がバタバタと騒がしい。
聞き覚えのある女の声が必死になって嫌がっている。

「ちっづるちゃ〜ん」

「ふっ、嫌よ嫌よも好きのうちという」

「ちっ!ちがいますっ!!」

「雪村こっちだ」

「総司!風間!!千鶴が嫌がってるじゃんかよっ!!」

「平助はあのばか会長どうにかしてよ」

「貴様…今なんと言った?!」

声からすると沖田と風間が嫌がる千鶴を追いかけ回し、斎藤と平助がそれを助ける図。

「貴様らのような虫けらが我が妻に近付くな」

「ほざけ…」

「誰が誰の妻だって?いい加減諦めて早く卒業したら」

「そうだぞ、風間!天霧とか可哀想じゃんっ!」

「天霧が可哀想…ふっ。意味が解らん。そんなことより千鶴を寄越せ」

「雪村、俺の後ろから離れるな」

「はっはいっ!斎藤先輩」

斎藤の背に隠れ守ってもらう千鶴。平助も手助けしているが沖田に風間、なんとも手強い2人だ。


ぎゃーぎゃーっと廊下では言い争っている。
そんな生徒達の煩さに堪忍袋の緒が切れた。


「…てめぇらっ!いい加減にしろ!!」

職員室のドアを思いっきり開ける。
そこには斎藤の背に隠れ、今にも泣きそうな顔をした千鶴、それに青ざめている平助。

そして問題児二名の沖田と風間。

「てめぇらは毎回毎回!飽きねぇのか!!このガキがっ!!」

「土方先生の発言に傷つきましたー」

「総司!土方先生、申し訳ありません…」

「ふん。貴様を見たら興がそがれた…」

「ふぅ助かった…」

風間は土方を見て眉間に皺を寄せそのまま去っていった。
斎藤は自分の落ち度だと落ち込み、平助は顔色が戻り安堵の色が見える。
そして沖田は…

「つっかまえた♪」

「きゃっ?!」

お構い無しに千鶴を後ろから抱き締める。

「「「総司!!」」」

「僕から逃げようなんて悪い子だね。お仕置きが必要かな」

「っきゃぁっ!」

千鶴の耳にわざと息をかけ、恥ずかしがるのを楽しむ。

「………」

その光景にイラッとした土方は、無言のまま千鶴の腕を引っ張り自分の元へ引き寄せる。

驚きの表情をしているであろう少女の顔は見ず、そのまま職員室の中へ入れた。

「総司っ!てめぇとはいい加減話し合わないといけねぇなっ!!」

「土方さんと話し合うことなんてありませ〜ん!だから千鶴ちゃん返してください!」


そんな言い合いが始まった。
職員室の中に入れられた千鶴はアワアワとその様子に焦っていた。

「千鶴、土方さんに任せておけば大丈夫だからこっち来い」

優しく手招きして自分の隣に座らせる原田。

「お前も災難だな。総司に風間か」

いえっ、と小さな手を横に振る。そんな動作を可愛いなと頭を軽くぽんぽんと叩く原田。

「っま、何かあったら直ぐに言えよ。俺と土方さんがどうにでもしてやるからな」

「はい…ありがとうございます」

頬を赤く染め、原田にニッコリと笑顔を向ける。
そんな純粋な千鶴が可愛く、つい手を出そうとする。


「原田…てめぇもいい加減にしろよ」

いつの間にか原田の後ろに仁王立ちして殺気を出す土方。
そんな土方を見て、冷や汗を流す原田。




土方先生は、生徒に教師にと、可愛い紅一点を守る為毎日忙しいのであった。



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