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読まれていない方は【温泉へ行こう!】をご覧になってからお読み頂くのをオススメ致します。

それでは、
ごゆっくりご覧くださいませ。







『温泉へ行こう』G




バチバチと熱い火花を飛ばしながらにらみ合いを続ける土方対風間────。


「………」


「………」


緊張感がその場に流れる。
ゴクッと誰かが唾を飲みこんだ音が聞こえそうな程であった。
…そして漸く、先に口を開いたのは土方だった。全員の神経が土方へと集中する。


「おい風間。てめぇ…さっきはよくも人の事を“落武者”とか何とか抜かしやがったな」


そのあまりにも思いがけない土方の言葉に皆、一斉にズルッと転びそうになる。


「フッ…今の貴様はどう見ても“それ”ではないか」


「なっ!?て、てめぇ…」


目の前でふん、と憎らしく勝ち誇る笑みを見せる風間を今にも殺しそうな空気を漂わせる土方。それを見守っていた面々が笑い出す。


「あはははっ、風間の言葉なんか気にしていたんですね」


「だな。ああ見えて意外と傷つきやすいからな、土方さんって」


「くっ、違いねぇ」


緊張感が一気に吹き飛び、ゲラゲラと笑い声が上がる。


「ぁあっ!好きに呼べば良いだろう!!だがなっ!!俺からも一言言わせて貰うっ!!
風間ァ、てめぇこそなんだ!そのふざけた手拭いは!!」


ビシッと風間の腰布を指差す。
それにまたも皆の口から


「「「ブッッ!!」」」


「アハハハ、やっぱり土方さんも気になっていたんですね〜」


「当たり前だろうがっ!誰があんな趣味の悪いものを巻く奴がいるかってんだよっ!!」


「くっくっ、おもいっきし目の前にいるがな」


「ちょっ!せっかく見ないようにしてたのに、や、止めてくれよー」


「ヒ、ヒィー、は、腹がいてぇー」


「…土方歳三…貴様…よくも目の前で使っている者がいながらその様に人を愚弄できるな」


「お、どうした、鬼さんよ。震えてるみたいだけどよ、寒いのか」


「…貴様ら、下等生物にこの手拭いの良さなど分かる筈がなかったか。
これは…この手拭いは、貴様らのような虫けら共が簡単に拝める代物ではない。
これは鬼の頭領である我が風間家代々の家宝としている高貴な手拭いだ。白は純白を、金糸は高級な金箔を使用している。
貴様ら、貧乏人には決して目にすることなど出来ない高級品だ。さあ、敬え!讃えるが良い!!」


ふんっ、と鼻高々に威張り散らす。その姿勢に彼らが怒りを現す。


「って!誰がお前なんかを讃えるかてーのっ!ふざけた格好して胸張って威張ってんじゃねー!!」


「そうだそうだ!何度も高級だとか何とか言って俺らをバカにしやがって!!へっ、それが一体どうしたってんだ!!!ただの布だろうが!!」


「普通家宝とは使用しないものではないのか?」


「まぁ、確かにな。使っちまったら値が下がっちまうからな」


「あんな所に巻いたもの家宝って…次の代の人が可哀想だね。僕なら絶対に触りたくないな」


「ああ…次に触る者の身になって考えただけでもおぞましい」


確かに、とまたも笑いが起こる。
その様子にもう我慢が出来なくなってきた。
風間は額に青筋を見せ、わなわなと再度震える。


「貴様ら…言わせておけば好き勝手抜かしおって…!!」


「それは悪かったな。だが、最初にふざけた事抜かしたのはてめぇだろうが!何珍しく傷ついた顔してやがんだ、鬼さんよ」


「土方歳三…!!」


キッと土方を睨み付ける。
そして先程よりも更に火花がバチっと激しく飛び交い、再び2人の罵り合いが始まった。


「あー笑った、笑った。にしても、何だがガキのケンカみたいになってきたな」


「あぁ、そうだな…」


「でも面白そうだからこのままにしておきましょうよ。
名付けて“落武者対変態手拭いの闘い”こんな下手物、滅多に見れませんよ。あ〜あ、近藤さんにも見せてあげたかったなぁ」


「総司」


「「「ちげーねー!」」」




◆◆◆


その頃────…


隣の女湯では、早くものぼせてしまった千鶴を千姫が優しく介抱しながら男湯を心配気にジッと見つめていた。


「(…どうして此処に風間がいるのよ!?───まずいわ…本当にまずいわ!!千鶴ちゃんの一大事よ!!)」


千姫は、初めから隣が男湯なのを知っており、先程から幹部たちがコソコソしていたのも実は知っていた。
“まぁ面白いからこのまま放っておきましょう”と千鶴が気がついていない事を良いことにわざと男たちを煽っていたのだった。


「(千鶴ちゃんが目を覚ます前に早くここから脱出しなくっちゃっ!)」


よし!と1人意気込む。
そして体から気を発し、『菊』と言い馴れた名を小さく呟いた。


その時、周りに風が吹き、ざわっと木々が揺れた。
そして────…


「───姫様、お呼びしましたか」


呼ばれて直ぐに千姫に遣える君菊が姿を現した。その姿にホッと胸を撫で下ろす。


「菊、急に呼んだりしてごめんなさい。お願いがあるの。千鶴ちゃんを安全な所に運びたいの。手伝ってくれる?」


「もちろんです、姫様」


「ありがとう」




◆◆◆


一方、男湯────。


息を切らしながら未だに互いを罵り合っていた土方、風間だったが、急に風間が何かに反応したように塀を見上げた。


「…これは鬼の気…ほぅ…」


にやり、と見上げたまま妖しく笑みを覗かせる。


鬼の血を強く受け継ぐ千姫の発した少しの気だったがそれを風間は直ぐに感じ取ってしまった。
しかもそれはかなり近くから感じた。近いなどというよりも直ぐ近くにいる。


「鬼の姫がすぐ近くにいると云うことは、我が妻もすぐ近くにいるということか…」


ぼそっと呟いた風間の言葉に今まで笑っていた土方以外の全員がピタッと急に止まり反応する。


「はあ?何言ってやがる!千鶴が近くにいるわけねぇだろうが」


事実を知らないのは土方だけ。
疑うわけ無く仲間に視線を向ける。
だが土方の顔をまともに見ようともせず、視線を泳がせ不可解な行動を現す。


「…そ、そうに決まってるじゃねえか!な、なーに言ってんだか意味わかんねえーし…!!(…やべぇ、覗こうとしたことがバレたら確実に土方さんに斬られる!!)」


「か、風間、お前、頭イカれてるのが更にイカれちまったんじゃねえか(千鶴が隣にいるなんて絶対こいつには教えねぇ!!)」


「…ゆ、雪村が隣にいる訳がない(雪村は俺が守る!!)」


「一くん、隣って素直に言ってるよ」


「わーっ、バ、バカ!総司!!何本当の事言ってんだよ!!!…あーっ!!」


「隣…だと」


「はぁっ!?千鶴、隣にいんのか!!」


まんまと自分達で暴露してしまい、土方だけでなく風間にまで隣が女湯とバレてしまった。


「ほぅ…、隣と分かれば貴様らなどといつまでも遊んでいる必要はない」


「何っ!?」


片方の口角を上げ、笑みを見せる。




そして




「さらばだ、幕府の犬どもめ!!」




低い笑い声を上げ女湯へ高くジャンプしたのであった───…





To be continued


2011/07/16up


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