+Novel+

□小さな三角
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「あちいっての」
「いや、別にくっついてるわけじゃねえんだけど」



八月のこの暑い時期に、誕生日が訪れる俺。


嫌って訳じゃねえけど、傍にいるだけで暑がられるって誕生日者本人としては悲しいだろ…;



誕生日なのに、くっつくな、あっち行けって。


酷えなあ…。




「てかいいのか?檜佐木さん、こっちになんか居て」
「ん、ああ、滞在任務…」
「え、そうなのかよ!じゃあ尚更仕事あんじゃねえのか?!」


黒崎が微妙な距離感を保って、そういうから、更にうざがられているような気分にさせられる。


「じゃないんだわ」
「は…?;」


口を開けたまま、疑問顔で固まる黒崎。

仕事はあっちできっちりあるけど、今日くらいは自分に甘くしてもいいだろうと思って他の隊員達に頼んできたわけで。

あいつらには申し訳ないが、それでも許してくれたことに感謝してる。


まあ夜には戻るつもりでいるが。。


「誕生日だからよ、今日は」
「……へえ、檜佐木さんが仕事をすっぽかすとは…」
「すっぽかしてるって言うな」


可愛くねえな、黒崎はいつも。

でも、そういうとこが、らしさがあっていいんだよな。


「なあ、あと何分くらい待てばいいんだ?俺は」
「何がだよ?」


学校の課題とかいうやつに向かいっぱなしで、さっきから俺と真っ直ぐ話していない。
ていうか、話してくれない…。


何がって、いやだから…。



俺、誕生日なんだって。



「分かってんだぜ、そうやって焦らしといて、後もう少ししたらあれだろ、こう、すげーのが出てくるっていう…」
「何だそりゃあ。ねえよ、んなもんは」


問題が安易に解けているらしく、ペンがさらさらと動かされる。

冗談きついぜ、黒崎くん。


これが本当だったらと思うと、目の奥がじわりとし出すが、堪える。


「あのなあ、黒崎」
「んー」
「あんまり大人をからかうもんじゃないぜ??;」
「…そうか、大人だったんだ…」


くるりと椅子を半回転させて、俺を見た。

よし、見た。


「黒崎、何くれるんだ?」
「…本気で欲しいのか、プレゼントなんか」


なんかって何ですか…;

わざわざお前に貰いに来たのに!;


「駄目か?欲しいと思ったら」
「いや別に。けど、檜佐木さんが欲しがるイメージ無かったからさ」


なるほどな。

それなら仕方ないか…。



…って、じゃあ俺はこのまま帰るのか…!




いやちょっと、それはあんまり…。。
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