++++ワンダーフォーゲル++++ †++PARADAISE OVER ANNEX++†

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 其処は王都から浮岳を使ってしまえば一日とかからない。
 夜のうちに王都まで歩きやきもきとしながら夜明けを待って、開門と同時に飛び込んだ。幸い獣にも盗賊の類いにも遭わなかった。
 「此方」から持って行った指輪を金に変えて、一番小さい三人乗りの浮岳を借りた。
 浮岳はリオバとも云い、判り易く云い換えれば有機飛行物質、つまり生きた飛行装置である。
 とは云え意識があると云うわけでは無く、ただ燃料が玉であったり、修復するのにビスやハンダではなく傷薬が必要であると云うだけで、些程機械と扱いは変わらない。
 以前に玉花に乗り方を教わっていたので、操縦師は雇わなかった。
 不馴れな乗り物でも、飛び立って半刻もすれば慣れた。

 目的の街には夕方には着いた。
 遙か上空から見下ろすと、白い砂で覆われた平地の一部が、白い壁に切り取られていた。
 壁の中には、これも白い家々と、白と朱に彩られた城があった。
 朱い尖塔の頂上には白地に金糸の龍が縁取られた旗がはためいていた。
 羅城は迷うことなく其の旗を目掛けて降下した。
 壁の上を歩いていた歩哨がこちらを見上げ、慌てふためいて持っていた弓を引いた。矢は僅かに浮岳の足許を逸れて、そのまま壁の外へ落ちて行った。
 亮介が何かを叫んだが、羅城は構うことなく城を目指した。
 城の内から外から兵士が集まってくる。
 其の真正面に、浮岳を着地させた。
 一斉に身構える兵士達を一瞥し、羅城は亮介を残し、浮岳から降りた。
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