++++ワンダーフォーゲル++++ †++PARADAISE OVER ANNEX++†
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「――何処まで行くんだ?」
息の詰まりそうな建物から出られて、亮介はほっとした。
空中回廊が、小さなドーム型の屋根の部屋まで、まっすぐに延びている。
振り返らず先を歩く朱里に、時々走りながら――哀しい事に身長差以前に大分コンパスの差があった――必死でくっついていきながら、ちらりと空を眺めた。
太陽は既に沈んでいた。
東京では考えられないくらいに、明るく大きな月が頭上に輝いている。
玉花の処では、こんなに月は大きくなかった気がする、と考えて、昨夜のむかつきがぶり返した。
「機嫌が悪いですね、全身から棘が出ていますよ。すぐに其れを引っ込めてもらえますか。主人はそういう事に敏感なんだ」
「あんた結構やな感じ」
「それはどうも」
ドーム屋根の部屋は、思ったよりも大きかった。
自分の家が丸ごと入るな、と複雑な気持ちになったが、ちょっと溜息を吐いて考えるのを止めた。
朱里がノックをする前に、扉は開かれた。音もなく、誰もいない。
「行きましょう」
勝手に入れと云う事なのだろう。亮介は頷いて、後に続いた。
扉は音もなく閉じる。月光が遮られて、辺りが真っ暗になった。
慌てて朱里の上着の裾を掴んだ途端、彼等の頭上に光が浮かんだ。此方に来るようになってから、ちょっとの事では驚かなくなったが、流石にぎょっとして光を見上げた。
光はゆらゆらと移動しながら、常に彼等の一歩先を照らしている。
小走りで上着を掴んだままだった亮介は、急に立ち止まった朱里の背中に、思いきり顎をぶつけた。
勢い舌を噛んでしまって、痛みに涙が滲んだ。
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