++++ワンダーフォーゲル++++ †++PARADAISE OVER ANNEX++†
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近づくにつれ、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。
やがて夜光草の灯に浮かび上がった質素な小屋を回りこみ、扉を叩いた。
軽い足音がして灯取りの小窓に影が映った。高い声が応える。
「はい、何方?」
「オレだ。ちょっと頼みがあって来た」
軋みをあげて、扉が開かれる。
目に飛び込んで来た光に、二人は思わず目を細めた。
「羅城? 亮介も――先刻帰ったばかりじゃないの」
小首を傾げる動きに添って花色の髪がふわりと拡がる。
江華に促されて、小屋の中へ入った。
冷えた身体に、小屋の中の暖かさが沁みた。
竈の中で薪のはぜる音が心地好い。
その上に置かれた鍋から立ち上る湯気が、適度な湿度を保っていた。
丸椅子に二人を座らせ、江華はぱたぱたと奥へ駆けてゆく。
いつもは竈の傍か、部屋の奥に備え付けられた作業台の前に座っている筈の玉花の姿は無い。
がたがたと云う音がして、江華が扉の向こうから顔を覗かせた。
「玉花今お風呂なの。もうすぐ上がってくると思うけど」
二人の頭にタオルを落として、竈へ向かう。
御玉で湯を掬い急須に注れた。
其れを盆に乗せ、湯飲みも三つ乗せて二人の前に戻ると、自分も椅子に座って、急須の中身を注いだ。
琥珀色の液体が湯飲みの中で踊る。茉莉花の香が拡がった。
「そうか――こんな遅くにすまない」
「ごめん……」
羅城は有り難くタオルで髪を拭い、亮介は江華に落とされたそのままの状態で俯いている。
「なんなのよ二人して、殊勝ね。とりあえず玉花が上がってきたらお風呂入って。風邪引いちゃうわよ」
各々の前に湯飲みを置き、江華は両手で自分の分を抱えた。
「――そう云う場合じゃねえんだよ……おれが風邪引いたって構わねえんだよ……」
江華は茉莉花茶を啜り、上目遣いに亮介を見上げる。羅城は無言で、タオルの上から彼の頭を撫でた。
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