++++ワンダーフォーゲル++++ †++PARADAISE OVER ANNEX++†

□4
2ページ/6ページ


「ちょ、ちょっと待て……っ」
 慌てた亮介に、女は振り返り、冷たく云う。
「あなたどうする気。逃げるの、逃げないの」
 部屋の中には羅城がいる。
 羅城を置いて、ここから出ていくわけには行かない。
 それこそ命知らずな行為だ。
「え、ちょっと待てよ、あのさ、俺、この中に友達が……ッ」
 女が一層眉を顰めたのが、気配で判った。
「ともだち? それはヒト?」
「ヒトって……え、わかんねえけど……」
「なんなのそれ。ヒトなら貴方と一緒に逃がしてあげるわ。そうでないなら知らない。ねえ、どっちなのか判らないの?」
「いやだから待てって、オイ」
 途端、ぽう、と廊下の奥が光った。
「氷菜、どうしたの」
 高い子供の声と複数の足音が、青白い光とともに近づいてきた。
「春遙――ああ、夏流も」
 女が僅かに表情を緩めた。
 光の中心に、大きな火垂灯をぶら下げた子供が二人立っていた。
 揃いの着物を着て、袖を襷でからげている。
 着物と同じように、二人ともよく似ている。
 何処かで見た顔だ、と亮介はぼんやりと思った。
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ