粛霜
□電王
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「先輩」
さっきより声を大きくして呼び掛ける。それでも反応なし。
ムカついた浦はつかつかと歩みより足下に伸びていた黒いコードを引っ張った。
「ぁああ゛俺の新記録が!!」
それはゲーム機のコード。引っ張った事によりプラグがコンセントから抜けてしまった。
勿論データは最後にセーブしたところまで消える。
「この亀野郎、何しやがる!」
「先輩がこれ以上馬鹿にならないようにしてあげただけだけど?」
「何だとテメェ」
もともと反りが合わなく、いつも対立する二人。
これもいつもの事ながら喧嘩を始めてしまった。
「へへ、やっちゃえ二人と、も」
野次を飛ばしていた龍太の声が不自然に途切れる。
「今コレ投げたの誰?」
手にしていたのは金汰用に置かれた黄色い目覚まし時計。
どちらかが投げたそれが見事に龍太の額に当たったのだ。
「さぁ、知らないね」
「避けられねぇお前が悪い」
「…ムカつく」
ぼそりと呟き時計と子犬を良太郎に預け、龍太は二人に飛びかかっていった。
人数が増えたことにより被害は悪化。
物は飛ぶわ、手が出るわ、足が出るわ。
「お前等ええ加減に」
「「「うるさい!」」」
「まったく。喧嘩両成敗や」
ついには金汰まで参戦してしまった。
「俺は最初からクライマックスだぜ!」
「面倒だから早く釣られてよね!」
「俺の強さは泣けるでぇ!」
「勝つのはボクだよ、答えは聞いてない!」
一人蚊帳の外で四人眺めていた良太郎はいつもの事なのでただ苦笑していると携帯が鳴った。
ディスプレイには同じクラスの友人の名前。
「もしもし。あ、侑斗?…うん、もう終わるけど…別にいいよ、うん。じゃあ校門で待ってて」
電話の電源ボタンを押し、帰ろうとするも腕の中の存在に気付く。
「君、どうすればいいんだろうね」
このままここに置いていけば被害を受けるのは目に見えている。
でも喫茶店である家に連れていく事も出来ない。
「…侑斗に相談しよ」
良太郎が帰った数分後、騒ぎを聞き付けた風紀委員のハナにこっぴどく叱られる四人がいた。
特殊だって?いいや、これが僕らの日常さ!
この部屋片付けるまで帰さないからね!
えぇぇ?!
文句あるの?
ぁ、ありませーん。
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