紫色の旅
□紫色の旅 〜 序 〜
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ーー 序 ーー
ーー今は昔、罪人という者ありけり。
その者、若く美しい女人の姿をし、闇の如く染まる髪を持つ。
その髪に抱かれるは、見たモノ総てを魅了し止まぬ光。その瞳を欲するが故の狂気を携える。
瞳に宿るその光は、人も闇も決して持たぬ、奇異なる紫色。
妖しくも美しい紫電の瞳は、人成らざるモノ、闇成らざるモノの証。
即ち、“人”でも“闇”でもないモノの意。
“禁忌を犯しモノ”、“血に飢えし獣”、“重き咎を背負うモノ”の証の色。
その名は即ち破滅・破壊の意。
死して尚、受け継がれゆく“呪”(チカラ)なり。
ーーそれは“罪”を背負うモノ。生まれながらに“チカラ”を持つモノ。罪故にあらゆるモノの欲を集め、“チカラ”故に留まれぬ。
あらゆる地を、幾多の国を巡る旅。あらゆる人を、数多の世界を渡り歩く流浪の旅。
いつ果てるともしれぬその旅路は、どれほどの時を有して終わりを迎えるのだろうか。
全ては、時の流れ行く侭に…ーー