紫色の旅
□紫色の旅 〜 序 〜
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幾つもの山を越え、谷を越えると、そこは暗く深い巨大な森……いや、樹海が広がっていた。
鬱蒼と生い茂る木々で溢れる中をひたすら奥へ進んでいく。するとそこに突如として、樹海に勝るとも劣らぬ巨大な村が姿を現した。
こんな樹海に囲われている村ではあるが、建ち並ぶ家々にはしっかりと、ここで数多の人々が暮らしている生活感が染み込んでいる。しかし村には全く人気がない。まるで廃村か喪に服しているかのように静まり返っていた。
と、その村から突然、一筋の光が空へと伸びた。光は一本の柱の様に、広大な空と村とを繋いでいる。その柱はこの世のものとは思えない、美しい紫色(シイロ)に輝いていた。
刹那、村は消えた。まるでそこには初めから、何も無かったかのように消えてしまった。人も、家も、何もかも。総て、消えてしまった。
村は、一瞬にして廃墟と化した。周りを囲む樹海と共に。