零の魔女

□16話
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(あーあ、俺も本格的に目を付けられたかな
 海賊も海軍も結局クズな奴はクズ、いい奴はいい奴
 いいんだかクズなんだかわからないところで縛られるのは御免だっつの
 まぁ…あの人の事だからなんとなく察してるとは思うんだけど

 俺は俺の好きなことをやる

 だからとりあえず今は…)

―バンッッッ!!

「おっさん!!!あんたまた僕のケーキ食べたでしょ!!」

乱暴に扉が開けられ、そこに青筋たてて怒った様子のアモ

「俺の家の冷蔵庫にあるものは俺の物ー、食べたかったから食べた」

カイリは特に慌てた様子も見せずベッドに横になったままだるそうに答えた

「だから基本甘いものは僕の!!
 せっかくここからひとっ飛びして有名なケーキ屋から長い列並んで買ってきたレアの奴なのにー!!
 おっさんは酒にでも溺れてろ!!」

「どんなイメージだよ
 おっさんだってたまには甘いものが食べたい気分になるんだよ」

「それこそ知るか!!とりあえずケーキとアイスは基本僕の好物で食べたくてわざわざ買ってきた奴なんだから
 勝手に食べないでよ!!何回も言ってるでしょ!!
 脳まで老いたか!!」

「うわー、なかなかの悪口
 俺一応まだ30代なんだけどー」

「ボクより10歳以上年上の場合おっさんとみなす」

「…相変わらずわがままなお姫様だこと
 白ひげ海賊団に中々甘やかされたみたいだねぇ」

「俺様でマイペースすぎるあんたには言われたくない
 そして僕の家族の悪口言ったらその口縫いつけるよ」

「あー怖い怖い」

言葉と顔が一致しないまま呟いたカイリは
机の上においていた煙草をくわえ、指からだした火で
煙草に火を付けた

「…」

それを眉間に皺を寄せてみるアモ

「…おっさん…ほんとあんたは何の能力者なわけ?」

「何回も言ってんでしょ、若いのに脳老いたの?」

「うっさいわ!!」

「ククク、俺は何の能力者でもないって
 生まれつき、俺は俺」

「意味分かんない」

睨んでくるアモを気にせず煙草の煙を吐き出すカイリ

「あ、そうだ
 君はさ、母親から悪魔の話を聞いたことがある?」

「…悪魔…?」

「そ」

「悪魔の実じゃなく?」

「まぁ…遠からずだけど
 せっかくだから説明しといてあげる
 ちょっと長話になるかもだから座りなよ」

今だ扉の前にたっていたアモを部屋の中へ誘う
カイリの雰囲気がかわったことを感じ取りアモは
部屋の中に入り、空いていた椅子に腰を下ろす

「お母さんの残した本で読んだことはある
 お母さんみたいに魔女と同じく黒い血が流れる特殊な人種 悪魔
 そして、悪魔は魔女みたいに黒い力は使えないけど
 悪魔の実の能力をそれぞれが使う事ができる」

「そ、悪魔の子どもは3人しかいない
 そしてそれぞれたくさんある悪魔の実の中でも全部がもちろん使えるわけじゃない
 1人は動物系 1人は特殊系 1人は自然系 の悪魔の実しか使えない」

「…で」

「察してるかもしれないけど
 
 俺はその悪魔兄弟の1人」

いつもの嘘くさい笑顔を浮かべ、
アモは先程と同じく眉間に皺寄せたまま

「あれ?予想以上に反応ないね」

「おっさんが予想を超えた衝撃発言をしなかったからね」

「クスクス、まぁ確かに
 魔女に悪魔だっていったって驚くわけもねぇか」

「で、さっきの能力のみた感じだとおっさんは自然系ってこと?」

「正解」

「悪魔が海軍の下についてたんだね」

「言い方が悪いね
 俺は他の2人と違って子供の時から海軍に捕まった…というか拾われた
 だから今まで一応世話になってたからいうとおりに仕事してたってわけ
 まぁ…色々あって今はこんな感じだけど」

「色々、ねぇ」

カイリはまた煙草の煙を吐き出し、遠くを見つめた

「さっきからさ、回りくどいんだけど

 あんたは、何が目的なの?」

「…ククク
 魔女の血を継ぐ君にお願いがある」

「…」






「強くなって…俺らを殺してよ」






「…意味がわからない…」

「言葉通りだよ
 悪魔の血を継ぐ、俺ら3人を殺せ 
 
 悪魔の血が流れる俺らはただの人間では殺せない

 同じ黒い血が流れるものじゃなければ」

「それは本で呼んで知ってる
 なんで殺さなきゃいけないか
 なんであんたは死にたいか聞いてんの」

「俺はこの能力が嫌いだから
 悪魔の血が流れる俺が嫌いだよ
 そしてその力を利用しようとしてる海軍や海賊はもっと嫌いだ
 大切な家族や恋人なんかいないし
 あ、でも一応残り2人は家族になるんだろうけどあいつらが死のうが生きようがどうでもいいし
 たぶんあっちも同じ考えだと思うし

 とりあえず俺はこんなつまらない人生生きる理由もない

 利用されるぐらいなら死んだ方がマシって事

 君も同じかと思ったけど、君は違う
 同じく利用しようとしている奴らは君をほしがる、海賊も海軍も

 だけど君は家族や恋人がいるみたいだし
 守ってくれる人がいるし
 君も守るらなきゃいけない人がいる

 だから君は生きる理由がある」

「………僕は、あんたの考えてることがわかんない」

「そう?結構俺にしてはわかりやすく話したつもりだけど」

「生きてるのにわざわざ死にたいとか、考える意味がわからない」

「だからね、言ってるでしょ」

「死にたい奴を殺すとかなんでいうこと聞かなきゃいけないの?
 生きるのが嫌なら生きればいい
 それが僕の君に対する復讐にすることにした」

カイリをまっすぐと睨み、そう言った

その言葉にカイリは目を見開き、口元に笑みを浮かべた

「…俺が言うのもなんだけど
 君もやっぱり性格悪いね」

「煩いよ
 にしてもめんどくさい、君みたいなのが残り2人いるとか」

「そ、俺よりめんどくさい性格だよ
 そして忠告しておくと2人はきっと君を探してる」

「!」

「黒い血が流れる魔女と悪魔
 唯一の魔女の血が流れる君
 そして悪魔の血が流れる俺ら兄弟

 その2つの血が交われば…最強の子どもが生まれてくると思わない?」

笑顔を浮かべ、そう言い放つカイリに
アモの眉間の皺は深くなる

「気持ち悪いんだけど」

「だろうね」

「不愉快」

「はいはい、
 でもこれはまじな忠告だから
 あいつら…いや、あいつは本気で君を捕まえにくるだろう
 1年前の事件で正体不明だった零の魔女の手配書も正式に写真まで世界にまわったからね」

「!!」

久しぶりに見た自分の手配書
前までの手配書は
【零の魔女 ALIVE ONLY 懸賞金 ∞】
と記載されていただけだったが
あの事件以来新しく回された手配書には
名前と顔写真までさらされていた

「…君ももう零の魔女として本格的に海賊や海軍が狙ってくる
 そしてさっき言った通り俺の兄弟も…

 だから、自分の身ぐらい守れるようになりなよ

 俺の気が変わらない内にね

 俺でも他の2人は止められるかわからないし」

「…悪魔のことはわかった…
 でも、強くなるのは当たり前のこと
 もう、僕の大切なものは絶対僕が守るんだから」

「…

 じゃあ、休憩もしたところだし早速続きでもしようか」

煙草を灰皿に押し付け、カイリはベッドから立ち上がり
アモの横を通り、部屋を出る



「…今日こそ負かしてやるよ」

「ククク、できるものなら」









 
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