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□スカウトの話
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ちょっとお話いいかしらと呼び止められたアッシュはすこぶる迷惑そうに厚い化粧の女性を振り返った。
慌てて女性が差し出した名刺を受けとりもせず覗きこむ。どうやら相手は日本でいうところの芸能事務所の関係者らしかった。



「あなた。モデルに興味無い?」



「興味無い」



即答するとアッシュはまた元の通り歩き出そうとする。
まさか一蹴されるとは思わなかった女性は一瞬その場に固まったが次の瞬間には血相を変えてアッシュの目の前に立ち塞がっていた。


「ま、待って。何も今決めなくて良いのよ。まずは話だけでも聞いてくれる?もちろんお友達も。
……あら、可愛いのね。チャイニーズかしら」



どこか子供でも見るような目で女性が英二に視線を移す。
いえ僕は、と英二が口を開きかけた瞬間アッシュは英二の腕を強く握った。



「悪いけど俺たち用事があるんだ。急ぐからこれで」



言い捨てたアッシュは英二の腕を握ったままその場から早足で遠ざかった。
一体どうしたんだいと英二は尋ねかけて止めた。
アッシュの表情は険しく歪んでいた。





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