短編

□転生
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「・・・・?」
 気が付くと『オレ』は小さなボートに乗っていました。
 
 起き上がって周りを見渡してみると辺りには霧がかかり、遠くには木々が見えました。物音は何も聞こえてきません。
 どこかへ流れているのでしょうか、ボートはゆっくりと前へ進んで行きます。

 ここには『オレ』しか居ないのか、と自然と思いました。でも不思議と怖くはありませんでした。
 何故でしょうか ボートが川を流れて行くに連れて体が軽くなって行くのです。 
 
 
 霧が濃くなりました。先程まで見えていた木々は見えなくなっていました。
 
 
 そんな中で  ああ これでやっと終われるのか と考える『オレ』はおかしいのでしょうか。
 ・・・・終われる?何を?何が?・・・・
 
 『オレ』は一体なんなのでしょうか。
 
 自分の姿をみるとスーツを着ているようです。
 下を向くと・・・、驚いた事に、腹部から血が出ています。でもそれが痛くはありません。
 腹部から出ている血をまるであたりまえのように感じる『オレ』はやっぱりおかしいのでしょう。

  

 霧が一層と濃くなりました。
 
 『オレ』の体に力が入らなくなりました。
 自分のことは分からないし、体の力は入らない。お腹からはこぷ、こぷ、と吐き出すように血が出ています
 
 

 『オレ』はボートへまた来たときのように寝転がりました
 
 




 そんなときでした。

 後ろから何かの気配を感じました。

 なにせずっと一人の空間だと思っていたものですからおどろきました

 彼・・・彼女・・・?どちらにせよ『人』ですが、『その人』はじぃと獲物を見つけた鳥のようにこちらを見つめているようです 強い視線を感じます

 ぽちゃん_ぽちゃん_と音がしました。『その人』はどうやらこちらへ向かってきているようでした
 『その人』もボートか何かに乗っているのでしょう。
 
 『その人』は『オレ』のすぐ隣まで来ると進むのをやめました。
 
 『その人』は『オレ』のボートを手でそちら側へ引き寄せます『その人』の手はぬれていて、その水が手を伝い『オレ』の顔をぬらしました。

  手でこっちまでこいできたのか、そう思いました
 



 『その人』の顔が見えました。どうやら男のようです。同じようにスーツを着ています。 『彼』の顔はどこかで見た事があるような、そんな気がしました。
 
 その『彼』を見つめていると何が可笑しいのか目を細めてくふくふと笑い出しました。
 
 『彼』の顔はとても綺麗で整っています。右の目はレッドベリルのようで、 六 という数字が書き込まれています。

  左の目もサファイアみたいです
  
  2つの宝石をもっと近くで見て見たいけれど、体がいうことをききません。
 
 そんな『オレ』を『彼』が抱き起こしてくれました。

 そして『オレ』の乗っていたボートから『オレ』を『彼』のボートへと移しました
 
 やっぱり『オレ』の乗っていたボートと同じようにボートは狭いです。
   だからなのでしょうか、膝の上に向かいあうように乗せられました。
 
 でも これでは『彼』の服を汚してしまうのでないか・・・下を向くとまだ血が出ています。
 
 「痛そうですね。でも、大丈夫ですよ」
 うっとりと彼は言います。一体なにが大丈夫と言うのか_
 
 『彼』は『オレ』の髪を撫でます。___眠くなってきました。
 
 『彼』が来たので忘れていましたが、川は流れているのです。
 
 「大丈夫、大丈夫です。同じ船に乗っていれば次の生でもまた一緒に・・・」
   『彼』はまたぼそり、呟きます
 
 『オレ』はまた『彼』の目を見ることにしました。これで『彼』と会うのも最後のような気がしたからです


  (  むくろのめ、すごいきれい  )

  むくろ?躯?骸?・・・?むくろとは一体何なのでしょうか。

  ああ、でもやっぱりとても懐かしいような儚い響き
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