戦え!方程式マン

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「宇宙に浮かんでいるたくさんの星々は、全てキラキラと輝いていました。
その中で、最も強い光を放つ星『塾星』という星がありました。
塾星を住居としている人々には存在意義がありました。
それは、『地球の数学などの勉強のわからない中学生を、成績向上へと導くため』
ただ一つの為に―――。」


「ただいまー。」
一軒の玄関ドアが開いて、隙間から明るい光が夜の住宅街に漏れる。
時は午後7時過ぎ、電柱の蛍光灯と月明かりだけが、暗い道を照らしていた。
部活帰りなのだろうか、少年はクタクタで足取りも重そうだった。
「お帰り、怜都。」
少年の母らしき人物が怜都と呼んだ少年を出迎える。
そっけない会話をし、夕食を取った少年は重たい学生鞄を気だるそうに持って階段を上がっていった。
そして廊下を歩き、彼の部屋の扉を開け部屋の中へと入る。
「今日も大変だったな…。」
怜都は溜息混じりにそう呟き、ふと、目の前のベッドを見た。
「♪〜、♪〜〜。」
誰かが、彼の知らない少女が居た。
黄色い服を着ていて、とても元気そうな少女が、彼の部屋で、鼻歌を歌いながら、漫画を読んでいた。
「!?」
怜都は霊やら悪魔やら何やらの存在を否定していたが、今一瞬だけ肯定した。
ほんの一瞬だけである。
「えぁ、は?…へ?…疲れが溜まってるのか?」
「何考えとるか知らんけど、ウチの事じゃないよな?」
ベッドからシャープペンシルが有り得ない速さで部屋の中を飛んだ。
それは怜都の後ろにあった可哀想なドアに突き刺さる。
これでは普段ただの筆記用具でしかないシャープペンシルも凶器になってしまうではないか。
誰も死因がシャープペンシルが刺さったとかは嫌であるように、彼も嫌だった。
怜都の顔は恐怖と驚きで曇った。
「あんた誰なん?」
少女の細い目が、怜都を睨み付ける。
「お、俺は京来怜都。…お前は。」
しばらくの沈黙の後、少女が口を開いた。
「企業秘密でーす☆」
「はぁ?」
少女はベッドから飛び降り、仁王立ちになって怜都に向き合った。
「咲って呼んで?それ以外は殆ど認めないから。」
咲は怜都に笑いかけながら言った。
だからといって怜都が何も言わない訳も無い。
「…何で俺の部屋に居るんだよ。」
誰でも必ず疑問に思うことをそのまま言った。
「えー、言わんと駄目?…居候?…させてほしいんだよね。」
咲は苦笑いをした。
「何で俺の家に居る必要があるんだ?」
誰でもする質問その2。
何が何だかわからない顔で怜都は咲に聞いた。
「…ドラ■もんって、知っとる?」
某国民的キャラクター、その名前を知らない人はかなり少ないだろう。
「当ったり前だろ?その位…。」
勿論、怜都も知っている。
「ドラえ■んは何での■太君の家に来たんだっけ?」
「…のび■を…、まともな人間にするために…。」
怜都の顔が引きつるのとは反対に、咲の顔には自信が溢れる。
「…こないだの数学のテスt…。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
触れられたくない過去、それは誰にでもあるはずだ。
「怜都はそれで…満足してんの?」
咲はニヤリと笑う。
「…。」
怜都は言葉を失った。
満足なんかしていないのだ。
「…気安く名前で呼ぶな。」
それが唯一言える、彼の言葉だった。
「じゃあ、怜都も名前で呼んでよ!ウチの事っ!!」
怜都は思った、何でこんな奴が俺の部屋に居るんだ。
しかし怜都は、どう否定しても変わらない現実。
そして、某国民的アニメのように必然的な現実であることを悟った。
「…勝手にしろよ。…阿呆。」
「やぁったぁぁぁぁぁ!!!!有難う怜都!!」
「馴れ馴れしくすんな!!別にお前の為とかじゃないからな!!…面倒くさくなっただけだ!!」

……。
………。
…………。

丁度、怜都たちが有り得ない出会いをしていた頃。
同じような不思議な現象が幾つか起こっていた。
しかも、特定された区域、時間、人間。
福泉中学校学区の、勉強の解らない中学生限定に同じような事が。
「そろそろ…、俺の出番かな?」
そして、月影に一人の男が…。
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