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□立綱
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2月25日。
月曜日。俺は福岡のこの町にもどっていた。全ての役目を終えた立向居は、一人のゴールキーパーとして、ここ陽花戸中に帰ってきた。イナズマジャパンというチームのキャプテン、円堂さんに憧れてついたポジション。それがいま、自分の糧となっている。春奈ちゃん(その名前の通り、春みたいに暖かい、花のように可愛い女の子)や栗松くんや、壁山くん、凄いことに一個下の小学生の虎丸くん、たくさん同志ができた。そして一番年上の綱海さん。あの人には、伝えなきゃいけないことがあったがいまだ伝えきれてないままだ。

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2月26日。
火曜日。綱海さんが一番好きなものは海だ。それ以外の『好き』はなく、綱海さんにとってはそれが全ての答えなのだ。俺は少し悔しい。

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2月27日。
水曜日。今日は卒業式の練習があった。歌は少し苦手だけど、二年間お世話になった先輩たちを笑顔で送り出そう。今は部活は休みだ。そういえば、綱海さんも三年生だ。卒業式まであと2日。

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2月28日。
木曜日。今年は閏年ではないので、明日が卒業式となる。綱海さんも卒業だと思うと、少し寂しくなった。急いで携帯を取り出すと、タ行で綱海さんの番号を探す。早く、早く、綱海さんに伝えたいことがあるんだ。俺は俺を急かす。そして長い8コール目、やっと大好きな綱海さんの心地よいテナーが耳を擽った。
「おう、どうしたよ立向居」「綱海さん、あのね俺あなたに伝えたいことがあるんです!」

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3月1日。
金曜日。卒業式当日。
「あなたのことが好きなんです」
やっと言えた。



たちむ、一人でもんもん。

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