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□狂気を込めて花束を
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昔のチームメイトだった松本が怪我をしたらしい。
マンションの階段から足を踏み外して左足を骨折。
年とったなぁと後藤が冗談交じりに苦笑しながら電話で話していた。
本人に言わせると後ろから誰かに押されたらしいが、その場には誰もいなかったし気のせいだったかも、とも言っていた。
「後藤、見舞いとか行くの?」
「一応な」
お大事にって伝えといて、と言うと後藤はわかったよ、と言いながら手を伸ばしそっと目の下にふれてきた。
ん、と目を瞑る。
「クマできてるぞ」
「んー、いつものこと」
にひひと笑うとあまり無理はするなよ、と後藤が片方の眉を下げて言った。
自分だって仕事で疲れているだろうに気が利くなぁと思う。
流石天下のGMサマ。
「心配すんならオミヤゲ買ってきて」
「ったく、お前は…」
はいはい、と後藤が頷いたのを見てにひひと笑い事務所を出る。
ロビーに配達のお兄ちゃんがいて俺を見つけると駆け寄ってきた。
「達海猛さんですか」と聞かれたから頷く。
「お届け物です」
そう言われて渡されたのは白い薔薇の花束。
まだこの前届いたやつだって事務所に飾られているのに。
ポストカードには同じアルファベットが並べられていた。
サインをし、「ごくろうさま」と告げて配達のお兄ちゃんの背を見送り、それから薔薇を見つめる。
どうした?と事務所から出てきた後藤に有里は?と問いかけると今日は仕事で出てるよ、と言われた。
そういえば今日は出かけるって言ってたな、
と思い、とりあえず花束を有里の机の上に置く。
明日は来るらしいから来たらこの薔薇も適当に生けておいてくれるだろう。
ていうか本当に仕事好きだな、アイツ。
明日だって普通なら休日なのに明日もアイツは仕事をいれている。
今日は金曜日だ。
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