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□狂おしいほど愛しい人に7題
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「達海さん、好きだよ」



「んー」



「聞いてる?」

「うん」





テレビを見ている達海さんを後ろから抱き締めながら話しかける。

達海さんがDVDを眺めながら適当に相槌を打っているのなんか残念ながらわかりきっている。





「達海さん愛してる」

「うん」


「本当に愛してるよ」

「うん」







「…達海さん、」




「!あ、オイ…ッ」






横から手を伸ばして達海さんの手の中からリモコンを奪うとテレビを消した。

ぎゅっと眉間に皺を寄せながら振り向いて反論を言おうとした達海さんにキスをする。








「ん、む……っ」



「っ達海さん、ヤろ」






気だるそうにしょうがねぇな、と舌打ちした達海さんの体を抱き上げてベッドに押し倒す。

仰向けにした達海さんの足を割って体をねじ込ませると首筋に唇を寄せた。



するとグイッと髪を引っ張られる。







「っ持田、痕、残すな」

「しょーちしましたぁ」



「聞いてないでしょ」

「うん」




「うんっておま…ってぇ!」







クスクスと笑いながらはだけた肩に噛みつく。歯形くっきり。






「もち、」




「達海さん愛してる、超好き」







だるそうに「あ〜…はいはい」と返答をした達海さんが首の後ろに手を回そうと腕をあげた。







「…達海?」







こんこん、と控えめな音が閉められたドアから聞こえてくる。



途端に達海さんの手が肩を押してきた。

退け、と目で言われて退くと達海さんはドアに歩み寄る。







「なに、後藤?」




「ああ、夜に悪いな。
試合観戦中だっただろ」






「別に平気だよ。で、なに?」




「それがな…」








なるべく中が見えないように控えめにドアを開け、それから廊下に出ていく達海さんの顔を見て肩をすくめる。

嬉しそうな、かお。










「……あーぁ」




所詮、唇と体を重ねたってその心臓は奪えやしない。




俺はただの体の関係。


達海さんが俺に彼奴を重ねて俺は愛してるから達海さんを抱く。
互いの欲が解消されても、本当に欲しいものは手に入らない。

(寧ろ重ねる度に遠ざかっていく)








「…俺の方が達海さんを愛してるのになぁ」







自分を想ってない男を想うだなんて、馬鹿らしい。

自分を想ってない男を抱くのはもっと愚かしい。







だけど、でも、俺は。











「……愛してるよ、達海さん」










ドアの向こうで楽しそうに話をしている達海さんにそう囁いた。
















(それを満たす容器さえ、俺たちには無いのにね)


















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