!!

□酒酔いラプソディー
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酒を飲むとデレ全開になるのが俺の恋人堺くん。

ひょんなことからそれがバレ、面白がって飲ませまくられたのがついさっき。






『監督、助けてください!
堺さんが、ぎゃあああ………』



ブツッと切れた電話に「うわぁ心の底から行きたくないなぁ」と達海は今飲み会で起こっていることを想定し、クラブハウスから飲み会をする居酒屋へ向かった。





















達海さん助けてください!

酒飲ませまくったらデレじゃなくて寧ろ…

ぎゃあああー








「―――本当に何しちゃってくれてんの」





座敷の奥から聞こえてくる阿鼻叫喚の声を耳にしながら、座敷から逃げてきた世良と夏木を前に達海が眉間に皺を寄せる。
「ヒィイイイ」という新たに聞こえた叫び声はたぶん熊田あたりだろう。







「俺超行きたくない。」




「そんなぁ!」

「助けてください監督」





Uターンをして帰ろうとした達海の体に世良が抱きつき、夏木がその足にしがみつく。







「いやほんとに無理。
堺が酔ってデレ全開になんのは希だから10回中1、2回だから」

「そんな激レアなんスか!」



「ドラ★エの『??系』を配合する並にデレ全開にすんの難しいから」

「諦めないで『??系』配合してください監督ぁー!」





ぐぐぐぐと押し合い引き合いをしている達海と夏木、世良に「達海さんはどこだ!」と叫ぶ堺の声が聞こえる。
サァーと青ざめる達海から力が抜けたのをいいことに世良と夏木が達海を座敷へと連行していった。







「ちょ、待って待って」







「達海さん!」

「監督!」


座敷に入った達海が自分の名前を呼んだETUの面々を見る。
座敷の中は長テーブルがひっくり返っていたりと大惨状で達海の前を座布団が空気を裂きながら通過していった。






「達海………?」





正座をした熊田と椿の前で仁王立ちしていた堺が振り返り、達海を見つける。
達海はひきつった笑みを浮かべ「よ、よぉ」と片手をあげた。






「達海ィ!!!」

「は、はい」




「そこに直れ!」





酒臭いにおいを漂わせながらドカドカと歩み寄ってきた堺に達海が正座をする。
どんな状況であろうがマイペースである達海が動揺していることにETUの面々は事態が著しく悪いものだと感づき、長テーブルを盾にその後ろに隠れる選手もいた。







「あんたはなァ、いつもいつも健康管理がなってねーんだよ!」

「…うん」



「『うん』じゃなくて『はい』だろうが!」




ひっと肩を震わせた達海が「はい」と言い直す。
正座をする達海とその目の前で仁王立ちする堺の様は、説教を食らう子供と子供を叱る父親のようだった。









「…堺くんって酔うと雷親父スイッチ入るよね」

「だから止めようと言ったんですよ…」

「だってぇデレデレな堺くん見たかったんだもん」





もん、って丹さん…。

あわよくばその状況の動画とって半年はそれでいじり倒したかったのにねー

……その罪は重いですよ。


こういう状況の場合、一番堺にシメられそうな石神と丹波は横になって寝たふりをしていて――その隣で事を見守っている杉江がため息をついた。
世良は座敷の外で夏木と一緒に堺を見て震え上がっている。






「一日に何本も炭酸ジュース飲んだり三食全部たまごサンドだったり、あんたが倒れたらどうすんだ、ぁあ゛?」




「だってドクペとたまごサンド好きなんだもん」




もんって可愛いな達海さん!!

ぐっと親指を突き立てた面々に堺がすぐさま睨みをきかせ――それらがすぐさま寝たふりをすると――達海を再び見る。






「つかまだ言い足りねぇ!
洗濯物はちゃんと裏返しにして出さねーし箸の使い方は悪いし、飯の時は肘たてるし、ちゃんと行儀よく食え!!」





今度はオカンスイッチ入った…。

ETUの台所という異名を持つ堺がそのモードに突入した瞬間、隙を見計らって何人かが座敷から脱出していった。





「あ、お前ら、」



「大体あんたはいつもそうだ!」





もったいぶったような手つきで堺がビシィッと達海を指差す。
酒が回ってきているのか頬が真っ赤になっていた。







「俺の話は聞かないくせに他の奴等の話は聞くし、俺よりも後藤さんとの食事を優先したり、この前はほいほい持田なんかについてってキスなんかされて……―――ッ」





「さ、さか…」





言葉が止まった堺に達海が首を傾げて名前を呼ぼうとすれば――ぼろぼろと堺の目から涙が流れているのを見、ぎょっと目を見開いた。








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