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□持田氏によるキセージジツ
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「…なんでいんの」

「会いに来ちゃった」



敵陣のETUの本拠地のクラブハウス、しかも監督の部屋に君臨している王者のエースが独特の笑みを浮かべる。


だからその笑みコワイって。


と達海が心の中で呟いたのは言うまでもない。









達海が眠気覚ましにシャワーを浴びに行き寝坊するな練習に遅れるなと有里の説教を聞き流し帰ってくる、たった20分のことだ。

20分前誰もいなかったその部屋には20分後の今 来客というより侵入者が佇んでる。
しかもそこらの不法侵入者が可愛く思えるほどの少々タチの悪いタイプの。









「会いに来ちゃったってその笑顔で言われてもこわいだけだよ」





達海は持田が座るベッドの上へ無造作に放られたパーカーを手に取る。

がしっと持田にその腕をつかまれた。







「未来の恋人に対してそんなこと言うなんて酷いね!せっかく貴重なオフの日をつかって会いに来てやったってのにさ」




「俺は今日オフじゃないの。
ついでお前の恋人になる気はさらさらないよ。お前を好きになるとかどんだけ悪趣味なのその人」






ぎゃは、と威圧感を与えるこれまた独特な笑い声を持田は上げ、達海の腕を優しく撫でた。


だからコワイからねその笑い方も。

と達海が心の中で呟いたのも言うまでもない。








「達海さん悪趣味そうじゃん」



「自分の勘だけで話すんなっての。
それに俺は見る目いいんだからさ」





腕を引こうとするがそこはさすが自分より若く力も有り余る年下の男。
持田の腕の力は緩むことなくびくともしない。





「…ていうかさ、なーんで俺が悪趣味の奴にしかモテないってなってんの達海さん?」

「持田だから」

「ぎゃは、」





嫌な笑い声、と達海はなんとか持田の手を振り払って呟く。
持田はそんな言葉など気にもならないのかジロジロと達海を舐め回すように見つめていた。





「達海さん、いつもそんな扇情的な格好してんの?やっば、それって誘ってるよね俺のこと」


「持田君廊下に立ってなさい」





持田を黙らせるために教師口調な感じに喋った達海だったが逆にそれが持田にヒットしたらしく、持田はにやにやとし始める。



「教師×生徒ってのもいいよな、よし、達海さんその設定でヤろーよ」


「お前ホントに何言ってんの。もう俺練習行くからね。…あ、暇なら部屋掃除しといてよ。掃除してから帰って」




一瞬ぽかん、とした顔をした後持田が吹き出す。

ぎゃはははという声が部屋の中に響いた。
達海は眉間にぎゅっと皺をよせて持田を見る。




「王者のエースのお誘いを断って軟弱チームの監督が掃除ときたか!達海さんやっぱりおもしろいよ」


「お前嫌味とかうざいよ」





はぁーと息を吐き、部屋を出ようとするとがしっと後ろから体を抱き締められた。





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