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□黒き指輪の許に若き怪盗は現る
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所謂カ.リ.オ.ス.ト.ロぱろでぃ。
流血シーン有。


以上のことが無理!な方はバックバック!
ばっちこーいな方はごゆるりと。






























物心ついた時、僕の世界はそう、その部屋で。
僕の世界を覆う大きな世界は大きな屋敷の中だった。
他人が言う世界は窓の外――塀の向こうにあって僕はそれが世界だとは知らなかった。

他人から見た僕の狭い世界が、僕のすべてだった。






まだ――世界が彼を大怪盗と呼んでいない――Mr.Tという名が、世界に知れ渡っていない一人の怪盗に出会うまでは。

















イタリアの都市から遥か離れた――俗世とは少し離れた場所にも思える――その町にはかつて栄華を極めた貴族の屋敷が在った。

その血は古く、広大な国をその支配下にも置いた王の血を引き、今となっては国を表立って動かすという目立つ行動はしていないが、最近ではその栄華を極めたという輝かしい一族の歴史よりも――その裏の顔である――偽札を大量に作り多くの犯罪組織や国家、政治家に資金提供をする、裏から国を動かすという行動が――表ではなく――裏の世界で目立っている。


とある一説によると歴史上の大きな戦争や革命の裏にもその一族の偽札が絡んでいたというのだから一族の栄華という輝かしい歴史の足元には後ろ暗い影が絡んでいる。









「―――…それで、なんでそんな後ろ暗い一族に目をつけたんだ?
ごっそり偽札でも奪ってくるのか?」




「わかってないね、成さん」





イタリア郊外のとあるバーで酒を飲んでいる二人のうちの一人が隣に座る男に問いかける。
隣で酒をあおる男は上機嫌なのかどこかの異国の歌を口ずさみながらグラスを揺らした。

カラン、と氷がガラスに当たる音が響く。







「俺の目当ては偽札だなんてモンじゃなくて」





にひひと笑いながら男はジャケットのポケットから一枚の写真を取り出す。
それから勿体ぶった手振りでそれをカウンターの上に置いた。

そこには怪しげに輝きを放つ、黒い宝石――ダイヤモンドだろうか――の指輪が写っている。





「…これは?」



「世にも珍しいブラックダイヤモンドの指輪!

真ん中にあるブラックダイヤモンドはアフリカの宝石の原産地として有名なとこから産地直送。ブラックダイヤは宝飾用の需要が少ないから今ではフツーのダイヤよりも安値だけど、この指輪に使われてんのは宝飾用でしかも18カラット、まわりにも14個のホワイトダイヤが並べられてるし、栄華を極めた一族に代々伝わるモノだから価値は億は安くない。

中央には一族の紋章である羊。

で、実は対となる指輪、今俺が狙ってんのは雌羊の方なんだけど雄羊の指輪はWWIの時に紛失。誰かに盗まれたんだとも言われてる。そのせいで一族のセキュリティはハンパないくらいに凄くなるわ、その後なんとかどっかの泥棒さんが一度雌羊を盗んだんだけど謎の死を遂げて指輪はちゃーんと一族の手元に戻ったことから指輪の呪いっていう話も出るしで、盗む奴も滅多にいないわけよ。

一族も片方の指輪なくしてから衰退し始めたから指輪を手放さないし。

元はと言えば王族からただの貴族に成り下がった一族が二つの指輪を手元に置くために
偽札を作り始めたっていう噂もあるしで指輪を手放したくないっていう意地が一族に偽札の美味しさを教えちゃったわけよ」





こわいねぇと男は酒をあおり、言葉とは裏腹に愉快そうに笑った。
成さんと呼ばれた男――成田は眉を潜めてから溜めた息を吐く。






「人生を終わらせる気にでもなったか?」

「まさか。俺は指輪ほしーもん」



ブラックダイヤモンドちゃんが俺を呼んでんの、と男は笑い写真を手に取る。
それに口づけをして「待っててね」と笑みを浮かべた。





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