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□7と10の愛情表現:
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!あてんしょん!




・少し流血的(というより狂気的)な表現出没注意。
・いつものように病み持田さん降臨。
・椿までもが…?


上記を読んでばっちこーい!な方はごゆるりと。
































その眸にうつす世界はどれだけ奇麗なのだろうか、そう想ったことがある。
どこまでも澄んだ、その眸にうつる世界はどれも価値があるものに想える。
綺麗な、眸だとおもった。どこまでも。

その眸のうつす世界がとても、美しく素晴らしいなのだとおもった。











「(…あ、カントク)」





グランドの真ん中に座り込み、どこかを見ている達海の姿を見つけた椿は足を止めた。

さわさわと流れる風の中で色素の抜けたこげ茶色の髪が揺れている。
気持ちよさそうに風に身を任せて揺れながら空を仰ぎ、鳶色の目を細めていた。






「(…あの人のまわりは時間がゆっくりしてるように見えるなぁ…)」






どんなものが見えているのだろう、と椿は思いを馳せ、その何かが自分の眸ではうつせないことに気付く。

決して自分には見ることのできない世界。
何よりも、きっとうつくしい世界。




足を止めたまま達海を見ていると、後ろから誰かの足音が近づいてきてぴたりと背後で止まった。










「……なに見てんの?」






「―――…!!」





まさか此処では聞くとは思ってもいなかった声に椿はビクッと体を震わせ後ろを振り向いた。
それからすぐに振り向いたことに後悔し、バッと目をそらす。

そこには椿が苦手とする独特の笑みを浮かべる、フードをかぶって顔を隠している持田が立っていた。






「も、持田さん、どうして、此処に」

「俺がオフの日にどこに行ったっていいでしょ?」






なんか文句ある?と瞳孔かっ開いた笑顔で持田に問いかけられ、ぶんぶんと椿が顔を横に振る。
どうして此処にいるんだろう、とか椿は思っていたがこれ以上深入りするほどの勇気はなく、この場からいち早く退散しようと身を退いた。

「し、失礼します!」そう椿が言うよりも先にグランドを見ていた持田が言葉を発する。










「…達海さん?」

「へ??」






「達海さんを見てたの?」






瞳孔の開いた笑顔で問いかけられたのかと思いきや、椿を見た持田の顔は笑っていなかった。
無表情のような、(たぶんこれが持田の普通の顔なのだろう)その表情に椿は思わず目を丸めた。

おそるおそる椿が頷くと持田は目を細め、口許を歪める。









「椿君っていつも達海さんを見てるよね」




「…も、持田さんこそ、」





たとえば先日の試合の時、ベンチに座る持田とよく椿は目が合ったが互いにそれは偶然だとかそういう類のものではないとわかっていた。

『同じ相手』を見ていると気付くのだ。
自分と同じ『彼』を見ている存在に。

そして牽制し合う。
自分の視線に『彼』は気付かないから、せめて同族嫌悪をして愛を確かめる。




そう、ちょうど今のように。








「…椿くんてさ―、

達海さんの眸にうつる世界は奇麗なのか・だとか、あの眸にうつるものなら全て価値がある・だとか、想ったりしてるんでしょ?」





口許を歪めたまま見下すような目つきで言い放った持田の目を椿が見る。
ビンゴ、と持田は確定の意味を込めてそう呟いた。







「――…達海さんの眸がうつす世界が見たい、あのきれいな眸にうつりたい。」





それはまるで綺麗な言葉で押し殺していた自分の本心を聞くようで、椿は思わずもう一歩後退する。
持田の眸は見下すものから哀れむものへと変わっていた。


これ以上は言わないで、と椿は全く対極で類似する矛盾した鏡に嘆くように願う。
唇を動かそうとしても思うように唇が動かない。









「綺麗なその水晶体にどこまでも、どこまでも、自分をうつしてくれるのならば」









持田は自嘲していた。









「自分はどれほどの優越感と抱えきれないだろう幸福感に満たされるのだろう」










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