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□狼まであと何秒?
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「…おもしろそうじゃん、達海監督」




はじめて実物を見た。



ぎゃは、なんか噛みつきたいくらい可愛いじゃん。
あんな座り方しちゃってさー、狙ってんの?
噛んだら甘いのかな?




ま、とりあえず俺の名前覚えてもらおーっと。



そのためにはまずこいつら滅多滅多にしてあげて、脳髄にまで俺を刻んでもらおう。うん、そうしよう。


















「…あー」




試合後バスにすぐ向かわないでぶらぶらしていると自販機の前でしゃがみこんでいる背中を見つけた。

緑のジャケットに跳ねた髪を見、ラッキーと呟く。






「なに飲むの」




自販機の下を覗き込んでいる横に立って金をいれる。
かしゃん、と金が落ちていく音をきいてようやく自分が話しかけられたと気付いたのか、達海さんは俺を見上げて目を丸めた。








「……えーと、誰だっけ?」





思わずびっくり。

本当にびっくりすぎて瞳孔開ききった笑み浮かべちゃった。






「なにそれ笑顔?
……あ、おまえ椿に足掛けた10番か」


「それってあの7番のこと?
ぎゃはははは、やっぱあんたには足掛けたことバレてた?」





超バレバレ、と達海さんは呟いてから「ドクペ」と缶ジュースの名前を口にする。
言われたままに押すとガタン、という音をたてて落ちた缶を達海さんが取り出した。






「いいプレーとは言えないけど、あれを抜けばおもしろいプレーすんね、おまえ」




缶ジュースを口につけ飲みながら達海さんが笑う。
にひひ、と子供みたいな笑みだった。





「あ、名前は、たしか、持田だっけ?」

「そ、持田っての。」





そうそう持田だ、と達海さんが嬉しそうに笑いながら缶ジュースを口につける。

うん。やっぱ欲しいな、達海さん






「それおいしい?」

「ん?うまいよ、飲む?」

「じゃ遠慮なく」




差し出された缶ジュースは手に取らず、その腕を引き寄せてから唇を押し付ける。
あ。ジュースをぶっかけられるのはさすがに嫌だなぁ、取っとこ。






「ん、むぅ……ぁっ」




達海さんの手の中から落ちそうになっていた缶を取ってすぐそばの空き缶を捨てるゴミ箱に放る。






「あ、おま、もったいな…っ!」





唇をあけた達海さんの口の中に舌を入れて口内を堪能するように舌を動かした。
自販機を背にしていた達海さんは力が抜けたらしく膝から崩れ落ちそうになったところを腰に手を回して支える。

息できてんのかな、とふと思って唇を離すと盛大に咳をされた。






「ごほ、っ、なにすんだよ、おまえ!」

「なにってキス」





もう一度唇を押し付けてから腰を撫でる。
キスの間に甘い声が漏れたのが聞こえた。


うわ、ちょー可愛い。







「ねぇ達海さん」





耳元に唇を寄せて囁く。







「俺のものになりなよ」







「は!?」


「なーんかね昔からキョーミあったんだけど今日会ってはっきりした。
気に入っちゃった、俺のものにさせてあげる」





俺は百獣の王。

王が欲しいならなんでも手に入る。
達海さんだって例外じゃない。



うっすらと笑みを浮かべて言えば達海さんがネクタイを掴んできた。

そのまま達海さんの方へ引っ張られ、









……ゴッ!!!!








「!ッ痛ぇ!!」





信じらんねぇ、頭突きされた!!






「俺が持田のものになる?」





頭突きをしてきた達海さんはネクタイから手を離して、にやりと笑う。






「おまえさ、俺をなんだと思ってんの。
俺は王様だよ?誰のものにもなんないの」


「〜っ、だからって頭突きするかよ!?ありえねぇ…」





「俺からしたら椿とおまえも同じ子犬みたいなもんだし」




百獣の王だとか王様だとか呼ばれる俺よりも王様な達海さんはぱっとネクタイから手を離して唇を尖らせる。

テレビでみてた達海さんの実物は映像よりも可愛くて映像でみてた以上に王様だった。






「百獣の王が軟弱チームの王様に跪いて請うなら俺をおまえのものにさせてやんよ」




俺なんかが絶対にできないことを挑戦的な笑みを浮かべて達海さんが言う。

「断る」のではなく「取り下げさせる」。
王様にしかできない芸当だった。




…うわ、達海さんってこんな人だったわけね。どうしよう、








「……っぎゃははははははは!」

「!」







むしろますます超好きになっちゃった!







「ははははっ…」

「…俺変なこと言った?」





なんとか息を整えて眉間に皺を寄せる達海さんと向き合う。

あんた超俺の好みだよ、





「俺は達海さんのものになれないよ、なんせ王様だからね。プライドだけは高いのが売りなワケ」


「じゃ無理だね」





にひと笑った達海さんのネクタイを引っ張って顎をつかむ。
「ぐぇ」と場違いな声をあげた達海さんの鼻先をかぷっと甘く噛んでから笑みを浮かべた。








「だから、俺があんたのペットになってあげるよ」





「は?」





目を見開いた達海さんの顔はあまりにも間抜けで可愛いなぁとか思ったりしてしまった。

ぎゃは、これって惚れた弱味とかいうやつだよねゼッタイ。





「子犬なんかと一緒にしないでよね?百獣の王をペットにできるんだから、感謝しなよ」


「おま、言ってる意味わかって」






ネクタイを掴む俺の手を外そうとしてきた達海さんの手を捕まえ、首筋に噛みついた。

短い悲鳴が聞こえる。







「達海さんがしてほしいことも、達海さんが聞きたい言葉も、達海さんが望んだ物も全部俺がするし、喋るし、与えてアゲル」







だって、そうすれば。








「きっと達海さんは俺ナシでは生きられなくなって、俺のものになるって自分から言うだろうから」






ぱち、と達海さんが瞬きをした。それからすぐに声をあげて笑いだした。

笑うことは言ってないんだけどね、俺。






「はははっ…、持田って思ったよりも面白いね」





楽しそうに微笑んでから達海さんは俺の顎の下を猫を撫でるように指先で掻く。

百獣の王にそんなことできんのはあんただけだよ達海さん。





「じゃ仕方ないから俺のペットになりなよ、持田。俺猫好きだからたっぷり躾してやんよ」

「ぎゃははは、じゃあ言っとくけど躾ちゃんとしないと噛みついて喰らっちゃうからね、達海さん」







上等、とどちらかが呟いて図ることなく互いに口づけを交わす。
達海さんの腰に手を回そうとした瞬間、くいくいっと髪を引っ張られた。






「持田、欲しいもんがあんの」

「なに?」








「ドクペ、買って」






まさか最初の命令がそれになるとはね、そう心の中で呟いてからやっぱ達海さんはおもしれぇな、と苦笑する。

可愛くて王様な飼い主は早く、と唇を尖らせていた。






「はいはいりょーかい。
ていうか俺ペットだけどパシリじゃないからそこんとこよろしくね」


「それは持田くん次第だねー」






上等、と本日何回目かになる言葉を呟くと自動販売機に小銭を入れた。




















じゃ今日からペットね?
ちゃんと可愛がってよね




(なんか面白いのが懐いたな)

(ああ、食べてしまいそうだ!)
















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あとがき



持田さんと達海さんの馴れ初め。
ペット^p^←

達海さんは本気にしてません。
遊びだろ〜とか思ってて持田にぺろりと一口食べられそうになればいいと思います←


なんとなくシリーズ化したいなぁとか思ったりしてます。
シリーズ化できたらいいなぁ…。


シリーズ化したら王子とかザッキーとかとタッツミーを奪い合えばいいよ持田←
ザッキーとはペットの座争えばいいと思うよ持田!!←←

…乱文失礼致しました。



拙い文にお付き合い有難うございました!







2011.5.29 天藍 深
2011.10.8 修正

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お題配布元「

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