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その人はいつも笑っていた。
どんな時だって笑っていた。





どんなに国の状況が辛い時も
父である前の王が死んだ時も
自分が命を狙われた時さえも





(まわりに不安を与えないよう)






それが王の役目であるとばかりにただただ笑っていた。


























『あんたさ』






『あんたって…俺は王様だよ?』




暇だから話し相手になってよ?と大臣達から逃げてきた王は、馬小屋にいる俺にむけて唇を尖らせた。










『その馬かわいーね』

『かわいいも何も戦が起こったらこいつはただの道具に成り果てるんスよ』




餌をやっていた黒い毛並みの馬から王へと目を向ける。
王様は唇を尖らせたままだ。





いくら可愛いって言ったって戦が始まったらただの道具として扱われる。
それは騎士である自分も同じ。


戦が起こったらこの国に命を架けて戦う。
この身をただの駒と化して。











『…だから戦がおこんないようにしてんじゃん』



唇を尖らせたまま王は言うと俺の横に来て、
馬の鼻をそっと撫でた。
気持ちよさそうに馬が鳴く。












『…そう、俺達はいつだってあんたに護られてるだけなんだ』









人を惹きつける才能のある王。
いつも人々に囲まれている一国の王。





本来ならば護られるはずの存在なのに誰にも寄り掛からずひとりで国を護っている。












『あんた、』






だから王様だってば、と王が眉間に皺を寄せて言う。
















『泣かないんスか』










そう問いかければ、






いつも太陽のように笑い、
人を支えるためだけに笑みを浮かべ、
(命が狙われても笑うことしかできない、)







その人はやっぱり笑って言った。














『王様が泣くことは許されないの』


















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