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欲しいと思ったものはものはどんなものであろうと手に入った。






地位があった、権力があった、金があった、
それさえあればなんでも望めば手に入り、
どんな願いさえ叶った








だけど









望んでも叶わなかったことが、
何よりも手に入れたかったのは、














唯、ひとつだけ………

































『あなただけだよ、僕のアプローチに落ちないのは』





出会ったのは綺麗な泉のある、暗い森の中。


小さな隣国の王様は泉のそばに腰を下ろし、両足を投げ出していた。
まるで子供みたいな座り方に思わず微笑む。






『アプローチ?
小さな隣国の王様に求婚してどーすんだよ、大国の王子様』







王様は決して大国の王子である自分にうざったいくらいなまでの媚を売ってはこなかった。





媚しか売られたことのない自分にとって、
それが興味を抱いた理由であって、
この王様に恋をした要因。













王様の前では楽に息ができた。





地位も名誉も社交辞令も全てひっくるめて投げ捨てられる。
それが嬉しくて、楽しくて、甘くて仕方がない。













『僕はね、あなたがほしいの』












『俺は国のものだからダメ』




にひーと笑いながら王様は言うと、ごろんと後ろへと寝っ転がる。
空が青いなぁと王様は呟いて目を細めた。
















『あなたが王様じゃなかったらよかったのに』








そうしたら僕は地位も権力も何もかも全て捨ててあなたと一緒になれるのに




(あなたはきっと国を見捨てることなんてできないだろうから)
(だから、そう願うんだよ)










『ワガママ王子様のお願いでもそればっかりは叶えらんないね』









『残念だよ』




ふふ、と笑って横で寝っ転がっている王様の顔を見る。
手を伸ばせば、その頬にふれられるだろう。




ふれることができないのは
あなたが王様で、僕が王子だから







あなたが国のもので僕のものにはならないから













(本当はね、攫ってしまいたかったの)























『…………王様ッ!!』






ある日いつも通り王様に会いに泉へ行くと、
王様の付き人が珍しく声を張り上げていた。











(でもそれをあなたが望んでなかったから、)












『……はは、』









真っ赤なあなたを抱えながら、
あなたの血に染まった男が笑う。














(それがあなたを攫わなかった理由。)






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