□∞03.5
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「よー…お前らサボり?」







「こんにちは」



「スギ、おま…何呑気に挨拶してんだよ!」






屋上で授業をサボっているとその人は漫画片手にふらりと現れて、
サボっている生徒を特に注意することなく気持ちよさそうに空を仰いだ。






「学園内が改装して変わっても…ここからの景色は変わんないね」





きれいな、横顔だと想った。
相手は自分よりもはるかに年上の、おっさんだ。






関係ない、と想った





蒼い空を捉える眸が、
広い空を仰ぐ横顔が、
紡がれる低音の声が、
そう、そのすべてが、





きれい、だと想った










一目惚れを、した。






下手したら自分の親となんら変わらない年の教師に、







一目見て、惚れた。















[]






















「スギー…、アレどこー?」

「さっき捨ててました」






アレとはさっき達海が要らない!と言って
ポリ袋に放り込んだ ファイルのことだろう。





「えぇー!」

「ポリ袋どこでしたっけ」




まわりの段ボールを丁寧にどけていきながら杉江がポリ袋を探す。

なぜこうなったかと言うと、杉江がたまたま授業をサボって校舎内をうろうろしていたら 英語科準備室からド派手な音が響いた。

段ボールの山、というよりジャングルと化した所から声が聞こえ、 段ボールをどかすと現れたのは英語科の教師、達海だった。


そして掃除を手伝うことになった。







「……ったく、どーしようかなこれ。あ、いつもまともに授業うけてない奴に手伝わせるか。吉田とか」




苛々とした口調で達海がなんだかよくわからないプリントの山を紐で縛りながらぶつぶつと呟く。





「…え、あの王子が手伝うんですか」

「でもなぁどーせ掃除なんて知らないとばかりに荒らしてくだけだろうな」




誰もに王子と呼ばれる二年の男子生徒を思い浮かべて杉江が苦笑する。
たぶん、達海の言うとおりだろう。

(それでも、もしあの王子が掃除などというものをしに此処に来たら)






「…脈あり、だよな」

「?どったのスギ」






いえ、とにこりと笑って杉江は見つけたポリ袋からファイルを取ると達海に渡した。







「あ、さんきゅースギ!」









笑った達海を見て杉江は綺麗だな、と思う。
ああこれが恋なんだな、とも思った。














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