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ぱらり。ぱらり。
縺れ絡み合った糸が
ひとつまたひとつほどかれる。
本人達さえ縛られ
身動きが取れなかったそれを
ひとつひとつほどいて綺麗に束ねていく
絡み合い縺れ合ったお伽噺は
綺麗に綺麗にほどかれた
ぱらり。
ほらまたほどかれていく。
[付き人と騎士と王子様と魔王と王様。]
「……ふふ」
「ご機嫌っスね王子」
英語の授業も無かったのに珍しく上機嫌なジーノに赤崎が眉を潜めて話しかける。
振り向いたジーノは幸せオーラ全開だった。
「実はねタッツミーに呼び出されたんだ」
前世からの僕のアプローチがようやく通じたんだね、と上機嫌で王子トーク全開のジーノに、
俺も呼び出されたんスけど
と告げれば確実に不機嫌になったジーノに八つ当たりされるのが解りきってる赤崎は何も言わずに「そうなんスか」と話を合わせた。
…遅れて行こう
それはもう珍しくるんるんで歩き出した王子様の背中を見つめながら、
…この時期に普通呼び出しって言ったら一つしかないのにホント脳内はお伽噺の王子様だなあの人。
「今日の放課後、語学演習室に来て?」と達海に上目遣いで言われ、ドキリとした赤崎はそんな自分などすっかり忘れたかのように思った。
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「………で何であんたがいんのかなー?」
此処にもジーノ、赤崎と同じく春色な脳内をした人間が一人。
学園イチの不良である持田が語学演習室の机に座りながら、入ってきた男子生徒に笑みを浮かべた。
「それは…僕の台詞だよ」
「あれー?俺、目がおかしいのかなぁ??
なんかそこに俺を追放しようとし続けてんのになかなか成功しない、マヌケな王子様が見える気がするんですけどー」
ぎゃはははっと持田が笑うがその目は決して笑っていない。
教室の扉に寄りかかっているジーノも微笑んではいたが、物凄く冷たい目で持田を睨んでいた。
「…また停学になりたいのかい?」
「だははっ、勘違いしちゃ駄目っしょ。
この前のも今までのも嵌められたんじゃなくて、俺が暇だから嵌められてやってたってだけだから!」
「へえ……それは初耳だね。
まさか君が律儀にわざと嵌まってくれてたとは思わなかったよ」
ぎゃはははと笑う持田とふふふ、と笑うジーノ。
赤崎が遅れて行こうと判断したのはどうやら間違いではなかったようだ。
「……早急に消えてくれないかな。
僕の五感全てに害なんだ、君」
「お互い様デショ?」
にこりと笑い合う二人。
終わりが見えないこの戦いに終止符を打ったのはのんきな、しかし彼らに言わせれば美しい声。
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