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あなたが世界を憎むというのなら、私は世界を愛しましょう。
貴方が笑みを与えることしか知らないのならば、俺は貴方に笑みを贈りましょう。

アナタの為ならば。

はあなたを陥れ、貴方を苦しめ、アナタの息の根を止めましょう。




魔法がとけるその時まで、
は貴方に気付かれることなく、あなたの傍で。





(不幸せの元凶は、それを愛していた。)





物語の行く末を見届けよう。



(さぁ、彼の口から)

(彼の真実を話しましょう)

ただつらつらと。
つらつらと。










[]










『男』にとって「世界」は、【自分】と【それ以外】に分けられた。
否、【自分】さえも【それ以外】に含まれ、『男』はそんな【自分】を遠いところから見つめていた。





それが、おかしい、と。





気付いたときには【自分】と『男』は別離し、とっくに壊れていた。


【壊れていた】、
だから、【自分】は、『男』は、



『王様』は――――――――
















「…っははは、【くだらない】」



シン、と静まり返る中で響き渡る笑い声。

準備室に集まった、椿や赤崎、ジーノと持田、そして後から現れた後藤を見て達海は声をあげてわらった。
それらが突然わらいだした達海へ眉間に皺をよせるなか、一人達海の横で窓によりかかる杉江は表情を変えず――寧ろ微笑んでいるようにも見えた。





「達…

「頃合いだね、うん」




達海が窓を開けると準備室へ風が入り込んでくる。
開け放った窓の前で重心を後ろへと傾け、空を見上げるように顔をあげた達海が片手で目を覆った。





「………、

従順な『付き人』、純粋過ぎて吐き気がした。
優しい『騎士』、世界を美化し過ぎて笑えた。
隣国の『王子様』、無知過ぎて恨めしかった。
友人の『魔王』、あの赤い眸が大嫌いだった。

忠誠心の固まりの『大臣』、
『王様』を憎み妬み、笑顔の裏でいつも思っていたでしょ?

―――消えればいいって」




後藤が息を呑み、達海はそんな後藤から視線をはずした。

『王様』の言葉にすくわれた『者たち』は【男】の言葉によって全てを否定されていく。




「『おまえ』ごときに何がわかった?
『おまえら』ごときに、何が理解できて、どうして忠誠を誓えて、どうして同情できて、どうして愛の言葉を紡げ、どうして『王様』と対等になれた?」






ただわらうだけの、笑み。





「『王様』は綺麗じゃない、澱んだ、汚い一人の愚者」





人々から慕われる王様?





「隣国の大国が戦争をふっかけてこなかったのは、王様が慕われてたから?
――そんなお伽噺を、信じてたわけ?」




まさか、とジーノが後退りをする。
『王様』が外交でもないのに城へ訪ねてくるという噂は耳にしたことがあった。

しかし泉で会えるから、と。








「大国に囲まれた小国が平和でいられたのは」





後藤さえも知らぬ歪んだ笑みを浮かべた達海が自分の体へと人差し指を向ける。







「国民の平和を買う代わりに、『王様』が【体を売ってた】から」








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