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「ス.カイ・クロ/ラ」ぱろ
※パイロットぱろです。
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コックピットに打つ雨。
雨音に合わせて歌を口ずさむ。
どこかの歌。
確か異国の歌だった。

――、飛んでるか?

――はコード名。
飛んでるよ、飛んでる。
操縦桿を握る指が規則よくリズムを刻む。
ああ、最高だ。
飛んでいる、俺は、今。
晴れてたら、よかった。
もっと優雅に踊れた。

視界の隅に黒い煙が見える。

そちらに気をとられた。
まさに一瞬の出来事。
一瞬の隙ができた。

衝撃。
煙が近くに。
景色が斜めに降下する。
真っ青な海が目の前に―――








「―――――!」




ふ、と目を醒ます。

資料が散らばった部屋の一角にあるベッドから起き上がり、洗面所へ向かう。
鏡にうつった顔を見、自嘲気味に笑った。

ひどい、かお。




「夢、か」



未だふわふわとする足を見下ろし、男は顔を洗った。
着替えの最後にジャケットを羽織り、男は格納庫に続く階段を昇った。











「起きたのか、達海さん」

「おはよドリ」



地下から続く階段を昇ってきた男、達海に作業着を身に纏い機体の様子を見上げていた整備士が振り返る。
達海は機体を見上げ、機種を呟くと整備士――緑川の横に立った。





「撃たれたの?」

「嗚呼、かすっただけみたいだがな。
何せパイロットが心配性らしく泣きべそかきながら持ってきやがった」



ああ、つい最近配属されてきた新人か。

達海は機体を見上げたままその新人の顔を思い出す。
横に立つ緑川が「懐かしいか?」と問いかけてきた。






「なにが?」

「あんたが乗ってた、女だろう?」

「ふ、機体を女だなんて呼ぶのはドリくらいだよ」




機体から目を反らして達海がわらう。
それからポケットに入った煙草を取り出し口にくわえた。




「達海さん」

「んー?」


「此処は禁煙だ。」



ちぇ、と達海は呟くと格納庫から出ていく。
緑川がその背中を見送っていると整備士の新人が声をかけてきた。





「ドリさん」

「湯沢か、どうした」



「あの達海さんって人何者なんです?」




整備士でもないのに格納庫の地下室にある部屋で暮らしている。
ベテランのパイロットには尊敬の念が籠った目で見られ、幹部は彼が何処を出入りしても咎めない。

何をするわけでもなく、しかし何もしないわけでもない。

作戦を立てることもあれば、
新人を指導することもある。





「…あの人はな、」





緑川が目を細める。






「かつて誰よりも空高く飛んだ、英雄だった人だぜ」





緑川の瞳にうつった英雄の背中が微かに揺らいだ。


















――、飛んでるか?











「……空に行きてぇなら、」→
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