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12月ということで。
クリスマスネタです。



















*椿



恋を、した。

それはまだサンタが居ると信じていた子供だった時の頃。
真夜中、部屋の窓はきちんと閉めたはずなのに――首をかすめた冷たい風に目を覚ますとそこには――





「……あ、やべ」




一人の男が片足をさすりながら、床に座り込んでいた。
赤い服に、白い大きな袋、立派な髭はなかったものの――一目で相手が誰だかわかった。







「サンタ、さん?」

「あーあ、本当は見られちゃいけないのになぁ」




ったく、足が痛むから。

そのサンタクロースは近づいてきた子供に弱々しく微笑む。
足がいたいのか時々顔を歪めていた。





「いたいの?」

「にひ、だいじょーぶ」

「むりしちゃ、だめ」


サンタクロースは目を見開き―――それから噴き出すと笑いながら子供の頭を撫でる。
その顔があまりにも魅力的だった。





「じゃ、いい子にはプレゼントをあげよう。
何が欲しい?椿大介くん」




なんでも、いいの?

うん、なんでもいいよ。


その時、それまでサンタクロースに貰おうと思っていたおもちゃのことは不思議と出てこなかった。
代わりに―――






「また、らいねん、あいにきて!」






へ、とぽかんとした顔。
にこにこと笑う子供にサンタクロースはぷはっと噴き出し、「わかったわかった」と頷く。



「また来年、な」



次の日、枕元にはきちんと欲しがっていたおもちゃが置いてあって――サンタクロースの話をすると親は目を見合わせて笑っただけだった。
同級生もその話を信じてはくれなかった。

だけど、サンタクロースは――――













「もう少し、か」

ケータイのディスプレイに写し出された時間を確認し、そわそわと窓を眺める。
念願のプロサッカー選手になり――実家から居を移してしまったから、ちゃんとわかってくれるかが心配だった。

カチ、と時計の針が12を指す。




「よ、椿」


「タツミさん!」


窓から現れた男に顔がほころぶ。
高校になった時、現れた――サンタクロースの格好をしていなかった男に首をかしげていると、男が笑って「だってもうお前子供じゃねぇもん」と言ったのを思い出し、思わず笑ってしまう。

そう、あの時子供だった椿は――サンタクロースに会いたいが為に毎年プレゼントとして翌年再会することをお願いした。
それは最初は単純に会いたかっただけだったが――今となっては恋心からきているものなってしまっていた。






「仕事、終わったんスか」

「ん、ばっちし」




ジャケットに身を包む男――名前はつい最近になってようやく教えて貰った――タツミがベッドの上に座る。
俺の居る場所がわかんないかと心配しました、そう言えば「お前俺のことなめてんの?」と言葉を返された。





「―――で、お前の今年のプレゼントは?
つーか、もうお前子供じゃないんだから俺もう来なくていいよね?」



ずるずると延長されてしまっているこの行事にタツミは肩をすくめて問いかけてくる。
椿はバクバクと音をたてる心臓をなんとか抑え込み、普通の態度を保ちながらタツミの手を取った。
つめたい手だった。





「はい、今年で終わりにします」




え、とタツミの目が見開かれる。
ねぇ、タツミさん、そろそろ終わりにしませんか。
(子供じゃない俺に毎年会いに来る意味なんて、――期待しちゃうじゃないですか)






「だから、」






最後のプレゼントに、






「俺にタツミさんをください」




ぽかん、としたのも束の間――だんだんと真っ赤になっていくタツミが「ばかじゃねぇの、」と小さく呟く。
体温を持ってすっかりあたたかくなった手がそっと握り返された。












結ばれた二人に、
メリークリスマス!










→「偶然が起きたらな」
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