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□概念が迷信。
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じゃあ、息を止めちゃおうか。
いつものように不法侵入した部屋の主は試合のDVDを見ながら呟いた。
その言い方がいつも口にする「腹減った」とか「ドクぺ飲みたい」とかいうのとまるで同じで、勝手にベットを占領していた不法侵入者は持参した雑誌から目を離して部屋の主を凝視した。
「なに、どしたのモッチー」
「いやいや達海さんこそどしたの」
そんな応えが返ってくるような会話はしていなかったと思う。
ただ、「走れなくなったらどうしようかなぁ俺」と持田が雑誌を見ながら数十分前にそう呟いて、達海はその時返答しなかったものだからとっくに会話は終わったものだと思っていた。
そんな持田の心境など達海は気にもしていないのか凝視してきた持田を見て眉を潜めている。
「俺に心中しようって誘ってんの?」
「まさか」
何が悲しくてお前と心中しなくちゃいけないの。
達海は持田から視線を外すと再びテレビへと向かい合い、テーブルに置いてある菓子をつまむと口へと運んだ。
菓子を噛み砕く音が部屋に響く。
「モッチーはさ」
達海のどこか澄んだ眸に見つめられた持田は本能的に顎を引いた。
その何を考えているか理解できない眸に惹かれたのは自分だが、その眸はたまに――本当に極稀に――怖くなる時がある。
「足が止まったら、どうするの」
当の昔に足が止まってしまった男は相変わらず何を考えているかわからない目をしている。
いつか――若しかしたら近いうちに――足が止まってしまう男は、ごくりと唾をのんだ。
「首に手をかけて力を込める?」
「空中にその体を放り投げる?」
「手首に刃をたてて目を瞑る?」
黙っている持田に達海はふっと口許を緩めるとテレビに目を戻した。
リモコンを手に取ると見逃していた映像を見ようと巻き戻しのボタンを押す。
「全部想像したんじゃない?」
「…達海さんこそ的確に当ててくるってことは全部体験済み?」
まさか。体験してたら流石に三回目で終えられたでしょ。
達海は喉の奥で愉快そうに笑いながらリモコンの再生ボタンを押す。
途端に静かになっていた部屋に音が溢れ出した。
「想像はしたけどね」
雑誌に目を戻そうとした持田の手がぴくりと反応する。
「目瞑って息止めて十数えたらどうにかなった」
にひ、と笑った達海が持田の瞳を捉える。
そんなこと、俺には。持田が言う前に達海は笑みを浮かべたまま言った。
「持田は強くないから、俺が一緒に目瞑って十数えてやんよ」
誰よりも強くて儚いあんたが何を言う。
思ったこととは裏腹に持田は特有の笑い声をあげると達海の「なにそれ笑顔?」という言葉を聞いてから再び雑誌へと目を戻した。
概念が迷信。
(そっか、じゃあその時になったら)
(一緒に。)
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あとがき。
久々のモチタツです。
+かと思いきやゆるーく×になってると言い張ります←
支え合ってる二人が書きたかったんです。
…ハイ。
拙い文にお付き合い有難うございました!
2011.6.11 天藍 深