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□ゆめからさめるのをゆめみていた
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海水にだけ染まるあかい髪。
満月の許でだけ光る赫い眸。
透き通る様な美しい白い肌。
世界を統べた海賊王の残像。
世界に他はない異質な存在。
ああ、欲しい。
そのすべてを、この手に。
『――だれ、おまえ?』
物好きな貴族に買われたその姿はまるで海賊王の威厳さなど欠けてもおらず。
誰にも媚びずに、気高き美しい海賊王が檻の中にいた。
ああ、うつくしい。
『あんたは俺の手に墜ちるんだよ』
その威厳などこの手で千切り。
自由に海を駆けた足は捕まえ。
何処も見れぬよう首をくくり。
その心を手にいれるのを願った。
「ねぇ達海さん」
水平線を見つめながら男が愉しそうに笑い声をあげる。
久々に眸にうつしたその姿は、嗚呼なんてきれい。
俺の手から逃れて誰かの許へ行くことなんて、赦さない。
「あんたの心はどうやったら手に入るのかな―――?」
あんたの心はどこにあるのかな―――?
男の問いかけに応えるものなどなく、ただ波の音だけが不気味なくらい静かに響いた。
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「達海さんきれいだなァ」
「は?」
海から顔を出した達海が自分の髪にふれた石神を見上げる。
船は海賊たちのホームである街の港から外れた場所に停泊していて、クルーは船底についた貝を取っていた。
「海水でまっかになんの?
林檎みたいでうまそー」
「あんまさわんなって石神〜。
堺が超睨んでるから」
やだァ堺君ったら嫉妬〜?
だはははと丹波と石神が笑いながら堺を見れば、同じように貝を取っていた堺と目が合う。
「堺、どったの?」
「…あ?」
甲板にあがった達海が堺に歩み寄れば堺は達海の頭にタオルを被せ、「はやく拭け」と不機嫌そうに呟く。
丹波と石神はにやにや笑いながら堺を見上げていた。
「あんたあんま海入んな」
「え、なんで…――」
…ああ、そうだよな、俺がこんな見た目だったら困るよな。
そう呟けば堺は眉間に皺を寄せ、ピンとその額を弾いた。
「あでっ、」
「違う」
「え?じゃあなんで」
堺は顔を反らして頭を掻くと、どこか優しげな手つきで達海の髪をすき小さく呟いた。
「―――い…だろ、」
「え!?なに!?」
「―――…〜っ、うっせぇ!」
ヒューヒューと囃し立てる丹波と石神を殴りに堺が再び海へと飛び降りていく。
達海はそれをみながら頭に被せられたタオルで顔を隠し、しゃがみこんだ。
「あれ、どしたんスか達海さん」
「……んー、なんでもない」
あんま見せびらかしたらもったいないだろ。
堺が呟いた言葉にバカみたいに顔があつくなっている。
達海はぷはっと息を吐くと笑みを浮かべた。
「……はずかしーやつ」
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